若冲 (講談社学術文庫) の感想
参照データ
タイトル | 若冲 (講談社学術文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 辻 惟雄 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062923231 |
カテゴリ | アート・建築・デザイン » 芸術一般 » 美術史 » 東洋・日本美術史 |
購入者の感想
日本美術史上の奇才達を研究し、世に送り出してきた辻惟雄氏が「人物」と「作品」という両視点を以って伊藤若冲を論じたのが本書である。
構成は、評伝と画歴に始まり、テーマに即した小論、そして後半は全て作品解説に当てている。
本書の形態を一言で紹介するのは難しいが、一例を挙げるならば、美術展等で販売されている“展覧会図録”の形式をコンパクトな文庫版に纏めた一冊…と思って頂ければ間違いないと思う。
さて、伊藤若冲と言えば、昨今急速に注目を集めたばかりではなく、今では歴史に残る人気絵師として揺るぎない地位を確立した人物でもある。
こうした事から、若冲には相当詳しい方もいらっしゃるであろうが、是非とも「今更」…と思わずに頁を捲って頂きたい。
本書は、改めて若冲の生涯、画業、交友関係、そして「若冲派」について幅広く解説すると共に、当時に於ける明の水墨画の影響、写生の流行等について論じ、更には印譜に関する小論を経て、作品解説へと至るのだ。
その充実度は、若冲の愛好家の方達であれば誰もが楽しめる内容であり、それどころか、若冲には余り関心がない…と言う方ですら、その魅力に惹き付けられる事は間違いないと思う。
取り分け素晴らしいのは、豊富な図版である。
残念ながらモノクロ掲載が大半であるものの、拡大図や部分図も駆使しているので、文庫本にしては充実している方なのではなかろうか。
また、辻氏の解説も解り易く、作品を観る上で是非とも参考にしたいようなポイントを明確に押さえている。
例えば、若冲の代表的な画題である鶏の描写に着目し、その品種までをも分析した上で描写の中に「写実」と「歪曲」とが同居している事を指摘していたり、或いは《群魚図・蛸》に描かれた“親蛸の足に絡みつく子蛸”の存在に若冲らしい機知を見出していたりと、つい見落としてしまいそうな表現についても微に入り細に亘って丁寧に論じているのだ。
若冲というと、とかく超絶技巧による細密描写に注目してしまいがちかもしれない。
然しながら、実は意外にも実際の形態には無頓着で、若冲の筆はもっと自由だったのだ。
…そんな事に気付かせてくれたのは大きな収穫であった。
構成は、評伝と画歴に始まり、テーマに即した小論、そして後半は全て作品解説に当てている。
本書の形態を一言で紹介するのは難しいが、一例を挙げるならば、美術展等で販売されている“展覧会図録”の形式をコンパクトな文庫版に纏めた一冊…と思って頂ければ間違いないと思う。
さて、伊藤若冲と言えば、昨今急速に注目を集めたばかりではなく、今では歴史に残る人気絵師として揺るぎない地位を確立した人物でもある。
こうした事から、若冲には相当詳しい方もいらっしゃるであろうが、是非とも「今更」…と思わずに頁を捲って頂きたい。
本書は、改めて若冲の生涯、画業、交友関係、そして「若冲派」について幅広く解説すると共に、当時に於ける明の水墨画の影響、写生の流行等について論じ、更には印譜に関する小論を経て、作品解説へと至るのだ。
その充実度は、若冲の愛好家の方達であれば誰もが楽しめる内容であり、それどころか、若冲には余り関心がない…と言う方ですら、その魅力に惹き付けられる事は間違いないと思う。
取り分け素晴らしいのは、豊富な図版である。
残念ながらモノクロ掲載が大半であるものの、拡大図や部分図も駆使しているので、文庫本にしては充実している方なのではなかろうか。
また、辻氏の解説も解り易く、作品を観る上で是非とも参考にしたいようなポイントを明確に押さえている。
例えば、若冲の代表的な画題である鶏の描写に着目し、その品種までをも分析した上で描写の中に「写実」と「歪曲」とが同居している事を指摘していたり、或いは《群魚図・蛸》に描かれた“親蛸の足に絡みつく子蛸”の存在に若冲らしい機知を見出していたりと、つい見落としてしまいそうな表現についても微に入り細に亘って丁寧に論じているのだ。
若冲というと、とかく超絶技巧による細密描写に注目してしまいがちかもしれない。
然しながら、実は意外にも実際の形態には無頓着で、若冲の筆はもっと自由だったのだ。
…そんな事に気付かせてくれたのは大きな収穫であった。