私のもらった文学賞 の感想

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参照データ

タイトル私のもらった文学賞
発売日販売日未定
製作者トーマス・ベルンハルト
販売元みすず書房
JANコード9784622078463
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » ドイツ

購入者の感想

オーストリアの小説家かつ劇作家であるトーマス・ベルンハルト(1931‐1989)が、若き日に受賞した数々の文学賞のうち、9つの賞について、受賞時のエピソードを書き残している。愉快な本である。
文学者が作品を書き発表する、ということはそれなりの内的必然性があってのことで、なんら世間的な報奨を目的とするものではないだろう。そうは言っても、賞を授ける側と受ける者との間に生じるコトが、ひとえに気持ちの良い賞賛と感謝の念だけで出来上っているわけではないらしい、ということは想像できないわけでもないのだが、それにしてもこのように当事者によってあけすけに、読者にとっては面白く描かれている文章は珍しい。それは例えば、賞を容易に拒否できない受け手の事情や受ける際に生じる屈辱的なこと、それに、授与する側の心ない言動や虚栄心等々なのだが、あけすけに描くことで、作者の人となりや文学観がくっきりと浮かんでくる。
また単に物議を醸す点だけでなく、作者自身の自伝的エッセイの側面、すなわち受賞にまつわるエピソード、その中で描かれている知人等登場人物との関わりは印象深く、単純に読物としても面白い。

末尾には3つの賞の受賞時に行なったスピーチと、言語・文学アカデミーへの「退会の辞」も掲載されている。スピーチは聴衆をケムに巻くような、もしくは、人間存在に対する「見切り」というか、多くの人が予期するような「挨拶や抱負」とは違う、詩のような、哲学的箴言のような、わかりにくいゆえにどこか魅かれる言葉が並ぶ。作者独特の聴衆への敬愛に満ちた謝辞なのかもしれない。「退会の辞」は、アカデミーに向けて切られた胸のすくような強烈な啖呵である。

結果的にこの本は著者の死後刊行されたようだが、著者としては生前発表するつもりだったに違いない。末尾にある「編集付記」が、この本の成立事情を解説しており、「訳者あとがき」がこの作品の内容について解説している。

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みすず書房から発売されたトーマス・ベルンハルトの私のもらった文学賞(JAN:9784622078463)の感想と評価
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