必携 落款字典 の感想

数多の書籍をネットで購入してきましたが、購入に際してこの本ほど事前情報を得られなかった書籍はなかったです。
特殊な分野の書籍ゆえ情報量が少ないのは止むを得ませんが、出版社はもう少し内容について詳細に紹介すべきです。
そんなわけで、興味ある方のご参考になればと思い、レビューさせて頂きます。

この書籍の大部分の頁を占めるのは、朱色の落款と、その落款の人物の略歴です。
一人につき複数の落款が掲載されていて、有名どころになると多くの落款が紹介されています。
例えば、
「尾形乾山」であれば略歴は４行、落款の掲載数は７つです。乾山の兄である「尾形光琳」になると、略歴は５行ですが、
落款の掲載数は30近くになります。
紹介されている人物は、近世が中心に、平安から昭和にかけての書家・画家・僧侶・学者・茶人・武士・工芸家など多岐に
及ぶ1300余名で、掲載落款の数は１万余となり、なかなか見ごたえがあります。
こうした書籍は大型本のことが多いのでしょうが、この本は小型なので持ち運びに便利です。

検索方法としては
１．人名目次
２．篆字索引
３．篆字一覧

があります。いずれも五十音順となっています。
１は通常の人名検索です。２の篆字索引では、文字単位で本文の落款にある篆字の検索が可能です。また３の篆字一覧
では、本文の落款とは関係なく、一文字一文字の篆字が掲載されており、自分で篆刻される人には大変便利だと思います。
掲載されている落款のサイズは本物のおよそ三分の二に縮小されています。

古書画鑑定の参考として、また篆刻の際の参考書としても、本書は大変良くまとまっています。
この種の書籍としては、価格も納得できる範囲なので、おすすめできます。