ルポ 現代の被差別部落 (朝日文庫) の感想

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参照データ

タイトルルポ 現代の被差別部落 (朝日文庫)
発売日販売日未定
製作者若宮 啓文
販売元朝日新聞社
JANコード9784022605337
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

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 1948年生まれの朝日新聞社記者が、長野県各地の被差別部落を現地取材した上で、1974年に刊行した本を、1988年に加筆の上文庫本化したもの。江戸時代における身分制の確立と共に成立した長吏兼皮革業者の身分は、合理的な根拠なしに一般社会から賤視・疎外され、信州では小規模で散在した部落を形成した。明治時代には、法律上「新平民」という形で「解放」されたものの、実際には貧困と差別は残り(差別戒名等)、補償なしに特権を剥奪されただけだった。その後も部落民は不自然な形で独自の区や隣組を作らされ、周囲とかけ離れた番地を付けられ(したがって住所で出自がばれる)、水利や入会権からも排除され、不安定な仕事(土方、皮革業、草履作り、柏葉採り等)にしか就けず、感情的な結婚差別も後を絶たない(親が部落民であることを隠しており、結婚を機に他人からその出自を暴露される例も多い)。差別が「伝統」化しているため、部落外の住民には差別しているという自覚が希薄であり、近親結婚が多いというような根拠なき偏見によって、差別が合理化される傾向が強い。こうした差別に対して、部落民自ら対抗する拠点となったのが、水平社や部落解放同盟であり、差別糾弾や学習会を通じて、自分の出自を恥じずに堂々と生きるための意識変革を目指し、同和教育や同和対策を進めたが、「寝た子を起こすな」論も未だ根強い。著者はこうした重い事実を、あえてできるだけ実名にこだわる形で1974年に公表し、問題提起を行った。その15年後、再び現地を訪れた著者は、幾分かの前進と、部落および運動の内部分裂(えせ同和・同和利権問題(341頁参照)も)や匿名差別の頻発等を見聞しつつ、血が通っていないまま進展している同和教育のあり方に、警鐘を鳴らしている。全体的に部落解放同盟に好意的な感が否めないが、地道な取材に基づく真摯で読み応えのあるルポである。
                           

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