岡本太郎の本〈1〉呪術誕生 の感想

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参照データ

タイトル岡本太郎の本〈1〉呪術誕生
発売日販売日未定
製作者岡本 太郎
販売元みすず書房
JANコード9784622042563
カテゴリ画家・写真家・建築家 » 日本人画家 » あ行の画家 » 岡本太郎

購入者の感想

 十年ほど前、近所の古本屋がつぶれるときに手に入れた一冊。時が過ぎていくたびに読み返していると、より強く触発してくるのを感じる。

 最近の文庫で活字化されているのかは知らないが、ここには同タイトルの文章や、「芸術の価値転換」、氏の「対極主義」を標榜した文など、本人の芸術作品に横溢している濃密さが、なんら希釈されることなく充満している。

 ここの文章の主題もさることながら、記されていく言葉自体が自分を規定しようとする外部と激しく衝突し、撥ね退けようとする力に満ちている。ほとんどの人からすれば、自分の周りから圧迫感を感じることなどなく、いわば相互に浸透して居心地の良さを確保して、身の丈に生きて幸せを感じているのが実際のところで、そこから考えると、岡本太郎は周囲に瀰漫する圧力を強烈に感受でき、その中で最高に苦しみ、それに強力に反発する表現を外に押し出せるという特権的な才能を持っていたのだと思う。そう考えると、あの力強さは納得できる。

 などという解釈にさえ苛立ち、作品を変化させ、自らも変化していく岡本太郎の精神が、この著作では活字によって感受できる。文筆家としても、相当の才能がある。

 読み進めていって思うことは、巷間「アーティスト」といわれている人たちは、いいとこアルチザン、大体がエンジニアかオペレーターに過ぎないということだ。「アーティスト」という言葉は、岡本太郎にこそふさわしい。まだ岡本太郎の書物を読んでいないのなら、この著作がお奨め。

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