芸術と科学のあいだ の感想

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参照データ

タイトル芸術と科学のあいだ
発売日2015-11-30
製作者福岡伸一
販売元木楽舎
JANコード9784863240933
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » は行の著者

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 朝日新聞に連載中であるコラム「動的平衡」のファンで、毎週木曜日が来るのを楽しみにしている。そんな中、同著を見つけた。同著も、日本経済新聞にコラムとして連載されていたとの事であるが、朝日新聞のそれと、内容は同工異曲である。しかしながら、いずれのコラムでも福岡氏の主張である「自然の前に、我々が謙虚であるべき」とのメッセージは、はっきりと読み取れ,秀逸である。
 特に蓑笠亭の心に残ったものは、「摩天楼にストーンヘンジ」」「虫の模様に見る文化の起源」である。人間が作り出す文化というものは、たとえ何千年という年月が経とうとも、自然とのシンクロニシティを求めるものなのだ。換言すれば、「自然こそがすべてのお手本」なのだが、昨今の人間は、そのことを忘れてしまっているのではないか。
 そんなことを想起させてくれる名著である。

分子生物学者にして、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』等の多数の科学エッセイの書き手、更に芸術への造詣も深くフェルメールに関する著書も持つ福岡伸一氏が、日経新聞の日曜版に連載(2014年2月~2015年6月)した72のコラムをまとめたもの。
本書で福岡ハカセは、絵画、建築物、インテリア、歴史的な発掘品などの “芸術”(昆虫や動植物の姿のようなものも含まれているが)を取り上げ、それらと“科学”のあいだに見出した共通性について、徒然に語っている。
日系人ミノル・ヤマサキによる、尖がった高層ビルだらけのマンハッタンの突端に全く同じ形の二つの無機質な直方体を並べた、今はなき「世界貿易センタービル」ほか、フランク・ロイド・ライト、イサム・ノグチ、中世フランドルのタペストリー「ユニコーン狩り」、ロゼッタストーン、レオナルド・ダ・ビンチの手稿、金印「漢委奴國王」、レーウェンフックの顕微鏡、フェルメール、サルバドール・ダリ、ブリューゲル「バベルの塔」、アンモナイト、葛飾北斎「男波・女波」、丹下健三「国連大学」、ヴィレンドルフのヴィーナス、伊藤若冲、ランドルト環、カバのウィリアム等の古今東西の“芸術”が取り上げられている。
そして福岡ハカセは、現代では、文系と理系あるいは芸術と科学を分けることが当たり前のように考えられているが、今から3~4百年前はそれらを分離する発想などなく、フェルメールもガリレオもレーウェンフックもスピノザもニュートンもライプニッツも、世界の在り方・在り様を捉え、書き留めたいと望み、其々が其々の方法でそれを成し遂げたのであり、その根本にあるものは、現代でも通用する「この世界の繊細さとその均衡の妙に驚くこと、そしてそこにうつくしさを感じるセンスである」と語っている。
凝り固まった世界の捉え方を解きほぐし、“Sense of wonder”を刺激してくれる、福岡ハカセにして書き得るコラム集である。
(2015年12月了)

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