狂気と王権 の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル狂気と王権
発売日販売日未定
製作者井上 章一
販売元紀伊國屋書店
JANコード9784314007054
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

井上章一さんの文章は軽妙洒脱。

それでいて、かの毒舌・小谷野敦氏もまた認めるとおり、

資料の読み込み(主に言説史、学問史)は、さすがに

お手の物。その分、断定形を避けた慎重な言い回しが

続くが、彼の場合、それが独特の信頼感をかもし出す。

今作のテーマは、天皇への不敬事件を起こした人間が、

どのように「精神障害」のレッテルをはられてきたかを

たどるもの。戦前も戦後も、「正気な者がアンチ天皇である

はずがなく、不敬事件を起こすはずがない」という点を

当局はアピールするに努めてきた。おしなべてメディアも、

その「フレームアップ」(事件の性格の型づくり)に貢献

してきた―それすなわち、「正気」の者を「精神障害者」だ

と力説し、天皇の赤子である国民の一体感を維持するに努めて

きたということだ。だいたい主題はこのようなものである。

著者も認めるとおり、『愛の空間』のごとき新資料の発掘など

は、この著書には期待できない。が、数ある不敬事件を、精神障害

という一本の糸で紡いだ結果、鮮やかなタペストリーが完成して

いて、スラスラいけながらも読み応えは充分。精神医学の歴史と

スキャンダラスな不敬事件史という二つの分野をまたいだ視点の

呈示もフレッシュである。

著者を、右か、左かで分けるのはナンセンスの極み。本書でもまた、

彼独特の問題提起をしていることからも、それは確か。さきに述べた

本書の主題とは別に、昭和天皇の「心配」やバイエルン皇帝のたどった

生涯に関する記述なぞ、井上章一ここにありきとでもいうような、

面白い論点である。是非一読あれ。

精神障害者と社会との関係を歴史的に追い、今日の政策を批判的に

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

狂気と王権

アマゾンで購入する
紀伊國屋書店から発売された井上 章一の狂気と王権(JAN:9784314007054)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.