ねじの回転 (光文社古典新訳文庫) の感想

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参照データ

タイトルねじの回転 (光文社古典新訳文庫)
発売日2012-09-12
製作者ヘンリー ジェイムズ
販売元光文社
JANコード9784334752552
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

"子供の登場で、ねじがギリッと一回転、心に余計深く食い込むとすると、子供が二人ならどういうことになるのかな"1898年発刊、スティーブンキングも絶賛する幽霊譚である本書は、怪奇・心理小説の傑作にして、文学技法上の『信頼ならざる語り手・意識の流れ』の元祖として、様々な形で読書を幾通りも楽しませてくれます。

個人的には、イギリス・アメリカのミステリー、文学作品の翻訳家として、カズオ・イシグロやヘミングウェイ、ヴァージニア・ウルフを訳したことで知られる土屋政雄による新訳。ということで、久しぶりに再読してみました。

さて、そんな本書は、大きな物語の中で異なる物語が語られる『枠物語』(額縁小説)といった形式で、クリスマスイブに古い屋敷で集まって怪談をしている中でダグラスという『ある人物が朗読する』意図して名付けられていないヒロインー『家庭教師の女性による手記』を、手記そのものではなく、語り手『私が正確に書き写した』とする。何とも【構造自体からして複雑で】読者を虚実入り乱れる世界へと誘導しているわけですが。(物語自体は素直で読みやすいです)

最初に読んだ時は【幽霊譚】ホラーとして"アイシーデッドピープル"1999年に、ブルース・ウィリス、当時天才子役と騒がれていたハーレイ・ジョエル・オスメントを主演に公開されたミステリー映画『シックス・センス』の方を脳内イメージ再生させて、ビクビクしながらも果たして【幽霊は実際にいたのか?いなかったのか?】を多くの評論家と同じくうむむと(楽しく)悩まされたものですが。

再読となる今回は、20才にして既に『行き遅れ』と感じている異様にテンション高く、男女共にすぐに抱きつく"信頼ならざる語り手"婚活ヒロインによる、雇い主の『イケメン貴族に(あわよくば)気に行ってもらう』ための【自作自演ロマンス】として読んでしまって。振り回される登場人物たちの姿に(幽霊ではなく)『ヒロインから早く逃げてー!』と心の中で叫びっぱなしで【幽霊譚と違う意味で】怖かった(笑)


 1898年に発表されたH・ジェームズの中編小説です。何といっても怪奇小説のブック・ガイドを見ていると必ず出てくるような小説ですから、私も大学1年生の時、新潮文庫で読みました。今回、光文社文庫で新訳が出る事になり、アマゾンさんに注文し、読了しましたのでとりあえず感想を。
 物語は、ある屋敷に宿泊した人が1人ずつ怖い話をするという、百物語のような形で進行します。その中の1人が私はもっと怖い話を知っていると、かって自分の家庭教師をしていたというある女性の手記を話し始めます・・・彼女はある人から、住み込みの家庭教師の仕事を打診されます。教えるのは、屋敷の所有者の甥と姪の2人です。そして、所有者の伯父も彼女好みの美男子です。また、報酬も非常に高価ですが、前任者の女性家庭教師は死亡していて、雇主とは今後没交渉というという奇妙な条件がついています。散々迷った末、彼女は仕事を引き受けます。着任してみると、2人の子供は天使とみがまうほど可愛らしく、屋敷も素晴らしく、杞憂は一気に晴れたかのように見えます。しかし、彼女はまもなく、召使と家政婦しかいないはずの屋敷で、正体不明の男と女に出会います。、家政婦に問いただすと、男は屋敷の召抱えの者で、女は前任者の家庭教師らしいんですが、2人とも既に存在していないということがわかります。つまり亡霊というわけです。しかもこの邪悪な亡霊は、家庭教師にしか見えないようで、子供に取り付いて・・・
 一見、ゴシック・ロマン風のストレートな怪談のように見えます。しかし、亡霊は家庭教師にしか見えてないようで、総ては家庭教師の妄想のようにも取れます。これは、作者のH・ジェームズがどちらともとれる様な書き方をしたためと考えられます。怪奇小説の衣はまとっていますが、その実は、異常状況下における登場人物の行動、駆け引きを描いた心理小説と読むのが正しいのかなと思います。さすが大文豪H・ジェームズ、一筋縄にはいきません!!
 なお、オペラ化(B・ブリテン)、映画化(D・カー主演)、そして、原作の前日譚ともいうべき妖精たちの森(M・ブランド主演)・・中々面白いです・・があることを付け加えておきます。
 いい忘れましたが、翻訳はこなれていて読みやすかったです。

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