帳簿の世界史 の感想

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参照データ

タイトル帳簿の世界史
発売日販売日未定
製作者ジェイコブ ソール
販売元文藝春秋
JANコード9784163902463
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般

購入者の感想

読みやすい記述である。世界史の有名人が沢山登場し、会計の面から眺めた評価や逸話を聞かせてくれる。世界史の知識や事件の解釈が豊富になり、たいへん勉強になる。
また会計の門外漢、簿記に忌避感を持つ人でも無理なく読める内容となっている。

しかし、問題点も多い。

(1)「世界史」となっているが、欧米しかのべていない。巻末に編集部が日本の帳簿史を追加しているが、中国、インド、イスラム圏については触れられていない。そもそも欧州で「帳簿が発達する基礎として、アラビア数字の普及があった」ことを記しているにもかかわらず、アラビアについて何も言及していない。

(2)本書の前半では「帳簿」とは「複式簿記」を指しているが、ルイ14世の頃から「国家統計」と混同している記述が多い。

(3)「帳簿」の内容がどのように進歩したかといった話はまったく読み取れない。会計を厳密に運用することの重要性とそれを維持することが如何に困難かを、繰り返しのべる。
「会計責任の欧米史」とすれば、過不足ないタイトルであろう。

(4)都合の良い史実のみ強調する例
1ルイ14世は当初、会計を重視し繁栄したが、コルベールの死後、関心を失い財政破綻を招き、王朝としての破綻の原因を作ったと述べる。
しかし、コルベールの死が1683年、ルイ14世の死は1715年、そしてフランス革命は1789年である。会計責任の放棄から政治的破綻に至るまで、80年~100年くらいかかっている。

2一方、ルイ・フィリップの7月王政については、イギリス議会の引用とはいえ、「フランスの会計は完璧」とし、最大限の評価がなされている。(p276-278)
しかし、ルイ・フィリプの王政は1830年に始まり、1848年に2月革命で崩壊している。立派な会計を行っても10年くらいで政治破綻に至っているが、その点には触れていない。

まとめると、「会計責任の欧米史」を素人にも分かりやすく記した蘊蓄本であり、教養の足しにはなるが、教訓を得えるのは難しい。
 
   
 

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