「時間」を哲学する (講談社現代新書) の感想
参照データ
タイトル | 「時間」を哲学する (講談社現代新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 中島 義道 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784061492936 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学 |
購入者の感想
哲学者中島義道氏による時間論の入門書である。新しい時間論を期待している哲学ファンにとっては物足りない内容かも知れないが、時間とは何か、哲学するとはどういうことかを知りたい一般読者にとっては恰好のガイドブックとなっている。
中島はまず現在と過去とのあいだに横たわる絶対的な断絶を指摘するが、そこには大森荘蔵の時間論の影響が色濃く見られる。大森が他の哲学者からの引用を極力排除したのとは対照的に、中島は哲学にとどまらないエリアから種々多彩なサンプルを援用する。その論域の広さを博識と感じるか煩わしく感じるかは意見の分かれるところであろう。
中島は時間の原型を過去に求め、現在や未来はそこから二次的に派生した制作物に過ぎないと説く。記憶が重要な位置を占める中島の時間論は経験に忠実であり、例えば植村恒一郎や入不二基義の時間論などと比較すると感情的湿度の高いものとなっているが、これは時間論に限らず中島哲学最大の特徴と言えるかも知れない。
文体をですます調に統一したり、邯鄲の夢という中国の故事を冒頭に置いたりと、哲学初心者に向けた配慮が随所にうかがわれる。新書版という制約の中で分かりやすさを損なうことなく、これだけの内容を盛り込んだ手腕を高く評価したい。
中島はまず現在と過去とのあいだに横たわる絶対的な断絶を指摘するが、そこには大森荘蔵の時間論の影響が色濃く見られる。大森が他の哲学者からの引用を極力排除したのとは対照的に、中島は哲学にとどまらないエリアから種々多彩なサンプルを援用する。その論域の広さを博識と感じるか煩わしく感じるかは意見の分かれるところであろう。
中島は時間の原型を過去に求め、現在や未来はそこから二次的に派生した制作物に過ぎないと説く。記憶が重要な位置を占める中島の時間論は経験に忠実であり、例えば植村恒一郎や入不二基義の時間論などと比較すると感情的湿度の高いものとなっているが、これは時間論に限らず中島哲学最大の特徴と言えるかも知れない。
文体をですます調に統一したり、邯鄲の夢という中国の故事を冒頭に置いたりと、哲学初心者に向けた配慮が随所にうかがわれる。新書版という制約の中で分かりやすさを損なうことなく、これだけの内容を盛り込んだ手腕を高く評価したい。