地域再生とフードシステム―6次産業、直売所、チェーン構築による革新 の感想

　直売所の開設で地域再生を！こう考える方々は多いだろう。この本には、直売所を戦略的に運営するための理論と実践に関する内容が体系的に整理されている。地域再生を模索する市町村役場の産業振興担当者、直売所を手がけるＪＡ職員や、農業法人の方々など多くの人に是非読んで欲しい一冊だ。
　また、タイトルのとおり、直売所のみならず、６次産業、食料産業クラスター、流通システム、チェーン構築、地域ブランド戦略と幅広く取り上げており、フードシステムの視点で地域再生の課題に迫るのも本書が初めてではないだろうか。著者は、日本フードシステム学会の会長、日本農業経済学会の副会長を務め、農畜水産物の流通を専門とする第一人者だ。そして何よりも、和合園や野菜くらぶなど先進的な経営戦略で全国でも有名な農業法人の顧問やアドバイザーも務めている。現場主義での研究を貫いているので、本書の内容も実践的かつ迫力があり、とてもおもしろい。ケーススタディも豊富に掲載され、理論から実践へのつなぎがスムーズに理解できる。
　農林水産省や経済産業省が講じる政策の不十分な点を指摘するなど、役所の方には耳が痛いかもしれないが、筆者が６次産業と食料産業クラスターのビジネスモデル、サプライチェーンやバリューチェーンの統合化についても論じており、是非、国という視点で地域活性化施策を企画・立案する官僚の方々にもお勧めしたい。さらに、ブランド化戦略と産地マーケティングなどは、ＪＡ職員や県庁、市町村の職員にとって有益な内容であり、是非、一読して、我が県、我が町、我が地域の活性化につなげて欲しい。