The Annotated Supernatural Horror in Literature の感想

「人類の感情の中で最も古く、最も強いものは恐れである。そして恐れの中で最も古く、最も強いものは、未知のものへの恐れである」と云う有名な一文で始まるこの長めのエッセイは、ラヴクラフトがW・ポール・クックの求めに応じて1925年から書き始めたもので、ウィアード・フィクションの分野では知る人ぞ知る必読書のひとつである。
詳しい内容については紙面がないので本書そのものに譲るが、この分野に於ける歴史的変遷を取り扱げ、考察した文章の嚆矢として、この書の価値は高い。また個々の記述は簡略だが、編者のヨシ氏も前書きで指摘している様に使い方によってはかなり学ぶべきところは多く、格好の読書案内、または第一に参照すべき歴史書として、今尚その魅力は尽きることがない。
日本では『定本ラヴクラフト全集7-1』(国書刊行会)に一度翻訳が出ているが、原文をその儘日本語に移しただけで、原書のタイトルが判らない等、不便な点が多かった。今回ヨシ氏は例によって資料として「使える」ことを主眼に、徹底して注を付けてくれている(但し今回の注は頁毎にではなく、本文の後に纏めて記載すると云う方式を採っている為やや読み難いが)ので、これなら末永く参照することが出来る。是非手許に置いておきたい一冊である。
尚、編者による前書きと序文、索引等の他、主要な内訳は以下の通りである。
本編約52頁
注36頁
人名毎に纏めた文献案内52頁