Wild Fruits: Thoreau's Rediscovered Last Manuscript の感想

　「森の生活」の同著者による、北米ニューイングランド地方の森に自生する植物の果実についての観察書。膨大な種類の果実が、四季を追って記述されており、読み進むにつれ、四季の移ろいも感じられる。リンゴ、ナシ、ベリーにナッツ・・・豊かな森と澄んだ空気に思いを馳せずにいられない。随所に挿入されているボタニカルアートも愉しい。
惜しむらくは訳文が悪文で、読むのが困難になる箇所も所々ある。大学の教員が、自担当の講義の教科書に指定して学生に無理矢理買わせるような本にありそうな文章、という感じである。訳者序文にも、本書の読者はソローの研究者や学生だけと思い込んでいるようなニュアンスが感じられる。ゼミの輪読記録のような本になってしまったのが非常に残念である。