子どもの美術全6巻セット の感想

1980年に、突如登場した図工教科書『子どもの美術』。従来の教科書が、技術の習得がメインだったことに対して、この教科書は「そもそも人間がものを作るとはどういうことなのか」と子どもたちに問いかけました。彫刻家・佐藤忠良や画家・安野光雅ら芸術家だけでなく、日本各地の小学校で優れた実践をしていた先生たちも一緒になって作り上げた本です。
今でも教科書は、パンフレットのような薄い表紙ですが、『子どもの美術』の執筆者たちは「子どもたちに、本との出会いを与えたい」と厚紙のカバーにしました。
このように志の高い教科書でしたが、採択率は驚くほど低く、結果的に出版は継続できなくなりました。そして「幻の図工教科書」と呼ばれるようになりました。
教科書として出版されたときは、一部の人の手にしか渡ることがありませんでしたが、今回こうしてAmazonで買うことができるようになったことに、心から感動します。
子どもの本としては高価ですが、読み物としても読みごたえがありますし、子どもが興味を持った工作を一緒にやってみるものおすすめです。1年生から6年生までじっくり楽しめると思えば、むしろお手ごろかもしれません。
もちろん大人にもオススメです。しっかりと大地に根を張った、それでいてどこまでも謙虚な、そういう大人になりたいと気づかされる本です。