中山みき・その生涯と思想 の感想
参照データ
タイトル | 中山みき・その生涯と思想 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 池田 士郎 |
販売元 | 明石書店 |
JANコード | 9784750310220 |
カテゴリ | 人文・思想 » 宗教 » 新興宗教 » 天理教 |
購入者の感想
信者の哲学者と2人の宗教学者が中山みきの生涯と思想について論考を寄せて鼎談する。信者でない私には、島薗進氏の論考「疑いと信仰の間」と鼎談での発言に強く引き付けられた。
島薗氏は、中山みきの信仰の深まりを三つの段階にわけて解釈する。
みきが神がかりした背景には長男の病気と婚家の庄屋の没落という事実があり、ここで事態の個別な解決ではなく、いわば全体的な解決がめざされたとする。神はなぜ不幸をもたらすのかという疑いと絶望に近い感情のなかで神意の内面化が図られる。
やがてみきは安産祈願の術を施すようになるが、そこには「人間の自然な生命力が神の働きによるものであるという視点」がみきの中で成立し神との和解の段階にいたる。
そして信徒との交流が行われ、信徒の信仰がみきの心の鏡に映るようになって、神の救けの不思議さが感得され教祖が誕生する。
一人の人間が「信仰と疑いが不可分であるような種類の心の深さ」から神意に目覚めて教祖になる過程が想像できて刺激をうけた。
池田氏は、教祖みずからが被差別民衆の状況と同じ地平に身をおき、最大多数の最大幸福からも見捨てられた人々と共に生きたことを強調する。教祖が語った「創世記」には、「受苦の共同体」がありそこから発する宗教的エネルギーに注目する。
島薗氏は「本当に救いを必要としているのは差別している方の側」と言い、池田氏も同意する。しかし無自覚な差別の持ち主が救いへのモチーフからもっとも遠い位置にあるのも確かであろう。宗教誕生の契機がなんらかの痛みにあるのは古今東西の真理であるから、池田氏には「貧のどん底から発する宗教」のダイナミズムをさらに突きとめてもらいたい。
教団外の者にとっても中山みきは大いに関心をそそる宗教者である。本書はこのような関心にこたえてくれる1冊である。
島薗氏は、中山みきの信仰の深まりを三つの段階にわけて解釈する。
みきが神がかりした背景には長男の病気と婚家の庄屋の没落という事実があり、ここで事態の個別な解決ではなく、いわば全体的な解決がめざされたとする。神はなぜ不幸をもたらすのかという疑いと絶望に近い感情のなかで神意の内面化が図られる。
やがてみきは安産祈願の術を施すようになるが、そこには「人間の自然な生命力が神の働きによるものであるという視点」がみきの中で成立し神との和解の段階にいたる。
そして信徒との交流が行われ、信徒の信仰がみきの心の鏡に映るようになって、神の救けの不思議さが感得され教祖が誕生する。
一人の人間が「信仰と疑いが不可分であるような種類の心の深さ」から神意に目覚めて教祖になる過程が想像できて刺激をうけた。
池田氏は、教祖みずからが被差別民衆の状況と同じ地平に身をおき、最大多数の最大幸福からも見捨てられた人々と共に生きたことを強調する。教祖が語った「創世記」には、「受苦の共同体」がありそこから発する宗教的エネルギーに注目する。
島薗氏は「本当に救いを必要としているのは差別している方の側」と言い、池田氏も同意する。しかし無自覚な差別の持ち主が救いへのモチーフからもっとも遠い位置にあるのも確かであろう。宗教誕生の契機がなんらかの痛みにあるのは古今東西の真理であるから、池田氏には「貧のどん底から発する宗教」のダイナミズムをさらに突きとめてもらいたい。
教団外の者にとっても中山みきは大いに関心をそそる宗教者である。本書はこのような関心にこたえてくれる1冊である。