ドイツの脱原発がよくわかる本: 日本が見習ってはいけない理由 の感想
参照データ
タイトル | ドイツの脱原発がよくわかる本: 日本が見習ってはいけない理由 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 川口 マーン 惠美 |
販売元 | 草思社 |
JANコード | 9784794221254 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 社会・政治 » 環境・エコロジー |
購入者の感想
著者は電機・原子力の専門家ではないため、素人(著者を含む)が理解できるレベルに話しを噛み砕いてあり、たいへん分かりやすい。
例えば、ベクレルとシーベルトの説明である。この一般人では混乱するこの概念を「たき火の火の強さを表すのがベクレル。その影響でどれだけ暖まったのがシーベルト。」と表現したのは、良い喩えと思う。
脱原発を性急に行うべきでない、との立場から書かれており、日本とドイツの置かれている立場の違いを解説する。具体的には以下のようなことである。
(1)陸続きの国があり、他国と電力の融通が可能である。(それが不経済・不効率であっても)
(2)ドイツ自体が石炭と褐炭の産出国であり、エネルギーの45%を自給できる。(日本の自給率は6%)
それほど有利な環境にあるドイツであるが、脱原発が順調に進んでいるわけではない。
著者は多面的に解説しているが、印象的だったことを一つだけ記す。
ドイツの自然エネルギーは北部に多い。風量発電が多く設置されているのである。一方、電力の消費地は南部工業地帯である。当然、北部から南部に高圧電線を通して、電気を運ぶべきである。もちろんその計画もある。しかし、これが遅々として進まない。
何故か。高圧電線が通る地域の住民が反対するからである。理由は電磁波による健康被害への恐れ、景観問題、自然保護問題などである。
脱原発と同じ理由・構造で反対運動が起こり計画が進まないとは、なんとも皮肉なことである。
本書は原子力に偏らず、電力問題全体を俯瞰して論じられており、脱原発に賛成の人にも反対の人にも有益な内容と思う。多少難を言えば、日本は原爆に対する恐怖がそのまま原発へのアレルギーに転化しており、冷静な論議の妨げとなっている思う。本書にはその観点はない。
例えば、ベクレルとシーベルトの説明である。この一般人では混乱するこの概念を「たき火の火の強さを表すのがベクレル。その影響でどれだけ暖まったのがシーベルト。」と表現したのは、良い喩えと思う。
脱原発を性急に行うべきでない、との立場から書かれており、日本とドイツの置かれている立場の違いを解説する。具体的には以下のようなことである。
(1)陸続きの国があり、他国と電力の融通が可能である。(それが不経済・不効率であっても)
(2)ドイツ自体が石炭と褐炭の産出国であり、エネルギーの45%を自給できる。(日本の自給率は6%)
それほど有利な環境にあるドイツであるが、脱原発が順調に進んでいるわけではない。
著者は多面的に解説しているが、印象的だったことを一つだけ記す。
ドイツの自然エネルギーは北部に多い。風量発電が多く設置されているのである。一方、電力の消費地は南部工業地帯である。当然、北部から南部に高圧電線を通して、電気を運ぶべきである。もちろんその計画もある。しかし、これが遅々として進まない。
何故か。高圧電線が通る地域の住民が反対するからである。理由は電磁波による健康被害への恐れ、景観問題、自然保護問題などである。
脱原発と同じ理由・構造で反対運動が起こり計画が進まないとは、なんとも皮肉なことである。
本書は原子力に偏らず、電力問題全体を俯瞰して論じられており、脱原発に賛成の人にも反対の人にも有益な内容と思う。多少難を言えば、日本は原爆に対する恐怖がそのまま原発へのアレルギーに転化しており、冷静な論議の妨げとなっている思う。本書にはその観点はない。
「住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち」など、海外と対照的に日本の文化や生活様式をユーモアあふれるタッチで紹介する著者の作品が好きだが、この本はエネルギー問題という全く異なるジャンルに真っ向勝負を挑んでいる。エネルギー問題ってなんとなくとっつきにくくて敬遠したくなるが、この本では電気のことやエネルギーをとりまく環境や歴史などが分かりやすく解説されていて、素人にとっては目からうろこだ。
「電気はあまっていても役に立たないと知ったとき、それはエネルギー問題を勉強するための大きなモチベーションとなった」ことで、自然エネルギーの活用を進めるうえでの課題も掘り下げている。今まで気にしていなかったが、このままでは将来、私たち消費者の財布に大きな負担がかかりそうで他人事ではない。環境問題について研究する学生にも、参考情報満載だろう。
ドイツのエネルギー事情もつぶさに見てとれ面白い。ドイツ在住作家ならでは、ドイツの生活臭が生々しい。ドイツ連邦系統規制庁長官や経済エネルギー省高官の一言は必見。是非、本書で探してみてはいかがでしょうか。
「電気はあまっていても役に立たないと知ったとき、それはエネルギー問題を勉強するための大きなモチベーションとなった」ことで、自然エネルギーの活用を進めるうえでの課題も掘り下げている。今まで気にしていなかったが、このままでは将来、私たち消費者の財布に大きな負担がかかりそうで他人事ではない。環境問題について研究する学生にも、参考情報満載だろう。
ドイツのエネルギー事情もつぶさに見てとれ面白い。ドイツ在住作家ならでは、ドイツの生活臭が生々しい。ドイツ連邦系統規制庁長官や経済エネルギー省高官の一言は必見。是非、本書で探してみてはいかがでしょうか。