一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書) の感想

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タイトル一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)
発売日販売日未定
製作者山我 哲雄
販売元筑摩書房
JANコード9784480015815
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » キリスト教・ユダヤ教 » キリスト教一般

購入者の感想

 筆者は拝一神教である古代イスラエル宗教が変容を遂げて唯一神教であるユダヤ教にいたる道筋を五つの革命をへて成立したと考える。エルとヤーヴェが合一しヤーヴェが優勢となって拝一神教の成立(第一の革命)。北イスラエルにおけるバール信仰の浸透によるヤーヴェ信仰の危機、南ユダにおけるヤーヴェ神の混淆化の危機、背きに対して罰を加える世界神の登場(第二の革命)、北の滅亡を教訓とするヨシヤ王の宗教改革と挫折(第三の改革)、バビロン捕囚によるヤーヴェ神への信頼の動揺、ユダの罪として受容することによるヤーヴェの復権(第四の革命)、ヤーヴェを唯一神とする第二イザヤの逆転の発想(第五の革命)である。ユダヤ教誕生の歴史的整理である。
 
 ユダヤ教誕生の意義はなんであろうか。素朴な古代イスラエル宗教の卓越性を信じてきたユダヤ人はバビロン捕囚を経験するなかで、彼らの神であるヤーヴェの敗北という深刻でかつ不条理な結論を強いられた。しかし彼らユダヤ人はこの事実をヤーヴェの敗北ではなく、自分で罪を認めて自分を罰する(自己処罰)という形で合理化して受け入れた。この結果、預言たちが指弾追及してきた「罪」は内面化する。
 人間は、自己が自己であることが容認されない、絶えざる自己否定を余儀なくされる不完全な存在(=罪人)と見なされることになり、改めて人間は律法遵守の義務を負うことになった。
 
 内面化した宗教としてのユダヤ教におけるヤーヴェは絶対的な超越神となった結果、ユダヤ民族だけの神ではなくなり、地上の全ての民族の神と位置付けされる。ユダヤ人はユダヤ人であることを超越的他者の眼から自己を見つめて自己否定する視点を獲得した。これらの点は後発のキリスト教、イスラム教にも引き継がれた。
 
 ユダヤ教成立とともにそれまでなかった天使、サタン、知恵、人の子などの霊的存在の観念が生まれたという。これらの消息について−ペルシャの影響などについてもさらに突っ込んだ考察がほしいと思うのは欲張りか。

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