プログレッシブ ロシア語辞典 の感想

研究社・岩波・コンサイスに比べて、「現代を読む」に力点を置いた収録語彙・訳語。
既存ロシア語辞典のあまりに「使えない」訳語に悩まされてきた人間にとっては、ようやく使える道具が現れたことはうれしい。
МИД, ФСБ などの略語の名詞性・格変化についても記載があり、過去の日本の辞典にない特色で評価できる。
有名作家・作曲家・画家の代表作品名が載せられているのも興味を引く。
英語の対応語を掲げてあるので、本書に収録されていないような英語→ロシア語／日本語の翻訳借用を類推する参考になる。
コロケーション等は研究社に任せるとして、ロシア語実務者にとっては必要不可欠な辞書だろう。
ただ、当然ながら完璧とは言えない面もすくなからず見うけられる。気づいたままに記すと、
・Голубые фишки (英語の Blue chips「有望株」)、акция 「販売促進キャンペーン」といったよく使う経済新語がない。
・記述内容が不均一（例：露上院の換言表現 Большая Дмитровка はあるが、下院の換言表現（Охотный ряд) がないなど）
・キリスト教・聖書由来の重要固有名の選択基準が不明確（Исход 「出エジプト記」があって Бытие 「創世記」がないなど）

装丁も上質ペーパーバック並なので、耐久性に不安がある。買い換え頻度を促して、改訂頻度を早める出版側の意図？