ランボー詩集 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルランボー詩集 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者ランボー
販売元新潮社
JANコード9784102176016
カテゴリ文学・評論 » 詩歌 » 詩集 » 近代詩

購入者の感想

 アルチュール・ランボーの、堀口大学による翻訳には当時の日本人読者を慮った意訳も多い。例えば『ジャンヌ・マリーの手』で、ケンガヴァールとシオンという地名が京と大阪になっている具。翻訳の正確さで言えば最近出た宇佐美斉訳や鈴木創士訳の方がよかろうと思う。

 しかしそうあってなお、堀口大学訳を買いなおした。この翻訳で、日本語の詩として読めるかどうかは、意味がはっきりわかるかどうかとは違うということに気づかされたからだ。たしかに訳が古く、文語体の『酔いどれ船』などに至っては何を言っているかはっきりわからない箇所も多い。しかし意味がわかれば詩としてすぐれているとは言えない。意味が曖昧でもその詩文に圧倒されるということがある。『地獄の一季』版の『永遠』について、たいてい太陽と一緒になった海だとか訳されるものを、「それは、太陽と番(つが)った海だ」と言う堀口大学の詩才は本物である。おそらく、ジョルジュ・バタイユが『エロティシズム』でランボーの詩を引くのは、一緒になるというよりも、このような「太陽と番った海」としての永遠だろう。

 そこでとにかくランボーの詩を読んでみたいという方にはこの詩集を。フランス文学を専門にするつもりだったりランボーの詩の正確な意味が知りたいならば宇佐美斉訳が、各詩ごとに下に注や成立にまつわるエピソードなどを付していて役立つ。ただし正しい意味をとることにこだわりすぎてか、詩としてはスピードが落ちるものもある。その点、鈴木創士訳は詩と正確さの中間といったところだが、一人称がほぼすべて「俺」になっているところがたまに違和感をもつ。ランボーはたしかに大胆だが、この早熟の天才にはどこか強がっている少年の面もちも捨てきれず、意外にも「僕」が似合ったりする。ちなみに小林秀雄訳『地獄の季節』も俺を採用しているので、ランボーに抱く人物像も人それぞれ、しっくりくる訳を探してみてほしい。

 

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