ドイツ社会史 (有斐閣コンパクト) の感想
参照データ
タイトル | ドイツ社会史 (有斐閣コンパクト) |
発売日 | 販売日未定 |
販売元 | 有斐閣 |
JANコード | 9784641161153 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会史 |
購入者の感想
本書は最近のドイツに関する社会史研究を簡潔かつ正確にまとめている。基礎的史実および研究動向を知る上では貴重な概説書ではある。その一方で決して「読める」本とは呼べない上、基礎情報には経済史の比重があまりにも大きすぎる。客観的事実を羅列する拘りを持つことは、その逆への迷走振りが最近顕著な歴史学にあっては賞賛に値するが、同時、物語を語る、という歴史家の基本的任務を放棄しているとも言えよう。編者が社会構造史と日常史の接点を見出したいと宣言しているが、それぞれ前半・後半部分に分かれて語られてしまっていることからも見て取れるように、融合には成功していない。また、本書を読んだ限りではその方法についてヒントを得ることも少ない。その原因として日常史の性質を挙げることは可能であろう。日常史の場合、経験・記憶・感情など数量化できにくい複雑な史実を扱っているため、「羅列」しにくい。しかし、問題はその「羅列」にある。物語を語り始め、日常史に友好的な環境を整備しない限り、編者の言う接点は一向に見出しえないであろう。