新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書) の感想

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タイトル新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書)
発売日販売日未定
製作者相倉 久人
販売元新潮社
JANコード9784106102035
カテゴリジャンル別 » エンターテイメント » 音楽 » ジャズ

購入者の感想

相倉久人氏は、1960年代より「現代ジャズの視点」(1967年)、「ジャズからの挨拶」(1973年)、「ジャズは死んだか」(1977年)などの評論集において、世界でも類をみない独自のジャズ史観を展開してきました。しかも、そうした理論武装のもとに60年代の新宿ピットインにおいて山下洋輔氏ら当時の若手ジャズメンを育てた功績は有名です。本書は、相倉史観の終着点といえるもので、ことに12章から13章にかけての70年代以降のジャズとその周辺の総括は、優れた文化論といえます。モダンジャズ神話の崩壊=「大きな物語」の終焉以降の「ポストモダン」ジャズを、「個別化」、「アーカイヴ化」、「小さな物語」等のキーワードで括ってみせる語り口は痛快絶妙です。もっとも、こうした氏の視点自体が、そもそも60年代のモダンジャズ神話の産物であり、とうの昔に消滅した「大きな物語」の残さではないかという批判は当然であり、氏も十分に分ったうえで、あえて本論考を展開しているのです。それが分らぬほど愚かな論客では絶対にありません。ちなみに、70年代に入り、氏がジャズからロックやポップスの世界へ転向した時は日和見と非難する人々がいましたが、本書を読めば、その理由も自ずと明らかです。一方、60年代に氏と対立した「スイングジャーナル」は数年前にようやく廃刊になりましたが、その最後の30年間はまさに「アーカイヴ」に過ぎなかったと思います。ともかく、本書を読んでからは、私もiPod(アーカイヴの極めつけ!)で聴く上原ひとみ氏(笑)の音楽を少しは素直に楽しめるようになりました。以上、10代半ばに氏の評論を読み、モダンジャズを聴くマイルストーンとした40年来のファンの一人として、21世紀の現在、自分が生きてきた時代を相倉史観に重ねて見ることができることを嬉しく感じた次第です。ただ、本書をもって相倉史観の終着点にして欲しくはありません。ファンというものは我がままですから、ついこの先を見せて欲しいと願うのです。無論、ここから先は読者一人々々が自分で考えるしかないことは十分に分っており、昔から、そして本書においても、相倉氏はそう強く啓発しているのですが。

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