兵士とセックス――第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか? の感想

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参照データ

タイトル兵士とセックス――第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか?
発売日2015-08-27
製作者メアリー・ルイーズ・ロバーツ
販売元明石書店
JANコード9784750342344
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

教えられるところの多い本だった。米兵によるフランス人女性の性的支配のありようが、政治レベルでの仏米関係をも規定したとする指摘は、単なる性的陵辱の物語にはとどまらない、問題の奥行を感じさせる。
第7章と第8章では、レイプというある種の女性蔑視の発露に黒人差別が交錯して、重層的に不幸が積み上がる構図が示される。監訳者解題でこれらの章は、「「セカンドレイプ」に該当するような記述が多く、読んでいてつらかった」との留保も付されているが、ほかの歴史本にはなかなか現れない歴史事実であり、個人的には大変勉強になった。
細かい話では、ドイツ人と性的関係をもったフランス人女性が丸刈りにされて、市中を引き回され、周囲のフランス人が嘲笑を浴びせる光景を撮影したロバートキャパの有名な写真について、フランス人男性の無力さを中傷する写真として絵解きをするあたりが印象的だった。どう見ても女性が侮辱されている写真から男性への中傷を読み取るのは、ジェンダー研究者の面目躍如といったところか。
女性史として戦争を綴るのは、当時の女性の地位ゆえに、記録が残りにくく難しい。特に戦争は、そもそも「男性の論理」が先鋭化したものだからなおさらだ。それだけに、本書のような戦争の女性史は、戦後文明国のスタンダードになった女性の社会的地位を逆照射することにもなって意義深い。こういう本が日本語で読めるのは大変ありがたいことだ。
監訳者解題も、本書の単なる礼賛にとどまらず、きちんと欠落や問題点の指摘もなされており、読む価値アリだと思う。特に日本の慰安婦問題で、安直なナショナリズムに踊らされないようにする上でも、解題を含め必読の本である。

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