ヘーゲル・大人のなりかた (NHKブックス) の感想

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　ヘーゲルの思想に興味があり、本書を手にとってみた。　　
　本書はヘーゲルの伝記的記述と思想遍歴、主著の要約が手際よくなされている。そのなかで、ヘーゲルの思想を、時代の限界を越えられず「現代」には「適応不能な考え」と、歴史を経ても尚、「現代」の個が共同体に関わるときに発生する課題を解決するヒントになる「有益な考え」の二つに、著者の西研という若く有能な知性がフィルターとなり、精査して分別している。　
　この本は、難解といわれ、ポストモダン思想の潮流からは外れ、批判の対象となった、ヘーゲルの思想をわかりやすく読者に届けてくれる。
　それは、著者が、自分がなぜこの思想に興味を持ったかということを明示し、つまり、普通の人が、哲学に惹かれてゆくプロセスを描いているからだろう。それを読むことにより私のような普通の読者もヘーゲルの思想を身近に感じることができるのだ。
　読了後、私は、自分の人間観・社会観に拡がりを感じることができた。思想形成に有益な本である。この著者のほかの作品も読んでみたいと思ったし、ヘーゲル自身の著作も読みたいと思った。