太陽の子 (角川文庫) の感想

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タイトル太陽の子 (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者灰谷 健次郎
販売元角川書店
JANコード9784043520107
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » は行の著者

購入者の感想

ほんの九歳の頃、この小説を読んで泣けて仕方なかったのを憶えている。本土からの視線では無視あるいは劣視される沖縄というマイノリティ文化を軸に、そのオキナワと戦争を引きずっって本土で生きる父の苦しみ、それを支える母の苦しみ、その狭間で世界の無惨さに目を開かれずにはいられなくなる思春期の入り口に立った少女ふうちゃんの物語に、本州の北部で何不自由のない生活をしていた子供の私が、その無力さに泣かされたというのは、今考えればこの作品の力を物語りはしないか。
あれからほぼ二十年がたち、現在合衆国在住。人間と人間の間にはあたかも差違も葛藤もないかのような、さながら「目を閉じたままのドライブ」のような日本社会の「人間」のあしらいも、数々の問題で終焉を迎えつつあるのは良いことでもあるが、今後の目安が立たぬままいたずらに、なお混乱を引き起こしはせぬか、半ば恐れながら遠方より見守る今、思い出すのは「太陽の子」である。この本を子供若者のみならず大人にこそ読んでもらえたら、と思い読み返した。人と人の間は、黙って目をつむってさえいれば丸く納まるというような、「優しさ」の仮面を被る無関心無責任怠惰で納まるほど甘くない、ということをおそらく私の人生で一番初めに教えてくれた本である。真のやさしさとは、人間がそもそも具え持った筈の善意を破壊するものとの命懸けの争いであり、それは個々人一生かけて取り組まねばならぬ学習なのだ。それに他民族うち・そと、敵仲間のきらいはない。自分以外の者を知るということは、共存しようという意志を貫いて実践してゆくことと変わりはなく、それを怠れば滅亡だけが宿命づけられた今日の世界で、誰もに一度は読んで貰いたい、最高の課題図書である。

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