1★9★3★7(イクミナ) の感想
参照データ
タイトル | 1★9★3★7(イクミナ) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 辺見 庸 |
販売元 | 金曜日 |
JANコード | 9784865720068 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文学賞受賞作家 » 芥川賞 » 101-125回 |
購入者の感想
堀田善衛の「時間」及び著者の父(南京にて従軍の経歴がある)の記憶、書き残したものを導きに、1937年の南京大虐殺について、評論とも私小説とも知れない手法で述べられている。
著者は、堀田善衛や武田泰淳等の表現を借りて情景を描き、そこに父親を立たせて、自分と虐殺された人々との関係に架橋する作業を重ねていく。
その息の詰まるような作業は、見ていないものを語る著者の試みを、妄想とは笑わせない、異様なリアリティを与えている。
著者自身が父の戦争体験を問わず、父も語らずに逝ったこと、戦後の多くの人たちが知らずにすませようとしたもの、著者たちが知らずにすませられなかったものが語られ、本来、大問題として何よりも優先して考えられるべき事柄が、なぜか問われなかった戦後70年の黙契が検証される。
終章にて安保法制の採決がされた現代の惨状へと、繋がる。
あとがきのくだりは、父を詰問し続けた本書の終りに、著者が父を決して免罪しない一方で、父と子がそれぞれ持つ恥の記憶にかすかな希望を匂わせる、不思議な温かさを感じた。誤読だろうか。
著者は、堀田善衛や武田泰淳等の表現を借りて情景を描き、そこに父親を立たせて、自分と虐殺された人々との関係に架橋する作業を重ねていく。
その息の詰まるような作業は、見ていないものを語る著者の試みを、妄想とは笑わせない、異様なリアリティを与えている。
著者自身が父の戦争体験を問わず、父も語らずに逝ったこと、戦後の多くの人たちが知らずにすませようとしたもの、著者たちが知らずにすませられなかったものが語られ、本来、大問題として何よりも優先して考えられるべき事柄が、なぜか問われなかった戦後70年の黙契が検証される。
終章にて安保法制の採決がされた現代の惨状へと、繋がる。
あとがきのくだりは、父を詰問し続けた本書の終りに、著者が父を決して免罪しない一方で、父と子がそれぞれ持つ恥の記憶にかすかな希望を匂わせる、不思議な温かさを感じた。誤読だろうか。