Fear Nothing (Dean Koontz) の感想

　先天性の遺伝子異常のためにあらゆる種類の光に身を晒すことが出来ない青年Christopher Snow。母親を事故で亡くして間がないというのに今度は父親を病気で喪います。父親の遺体を荼毘に付すために日が暮れた後に病院へ向かいますが、なぜかその遺体が身元不明のホームレスの惨殺死体とすり換えられるところを目撃してしまいます。父親の遺体を取り戻そうと町を駆けるスノウですが、やがて自分を取り巻く町の人々すべてが何かを隠していることに気が付いて…。

　物語の大半は父親が死んだ日の日没後から翌朝までの謎に満ちた一晩に展開されます。この間に読者はChristopherとともに謎解きに付き合うわけですが、作者のKoontzは読者をかなり「引っ張る」ことになります。もう少しスマートにお話を展開させることも可能だったかと思いますが、この「引っ張り」をまどろっこしいと取るか、読書の醍醐味を長時間持続させてくれる贅沢な作品と取るかは読者次第でしょう。

　一方で、2日目の夜の話がこの500頁に及ぶペーパーバックの最後の50頁くらいで描かれます。第1夜にあれだけの紙幅を費やしたのに比べると余りにもあっさりしすぎてはないかと首を傾げてしまいました。そして事の真相もどこまで大きな衝撃を持って読者に迫るか、少々疑問の余地があると私は感じました。

　Koontzの英語はかなり平易です。ただしこの作品についていえば、遺伝や感染病に関する英語表現を知らない読者には読み進むのに少々難儀を感じるかもしれません。