新潮 2014年 06月号 [雑誌] の感想

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参照データ

タイトル新潮 2014年 06月号 [雑誌]
発売日2014-05-07
販売元新潮社
JANコード4910049010648
カテゴリジャンル別 » 雑誌 » 文芸・総合 » 文芸

購入者の感想

古井由吉・大江健三郎の対談『言葉の宙に迷い、カオスを渡る』は、
対照的な晩年性を辿りながらも、しかし、文学の高みに於いて
誰よりも互いの事を良く知る二人が、作品について詳細に語った。

対して、浅田彰・東浩紀の対談『「フクシマ」は思想的課題になりうるか』は、
時に炎上をも恐れぬ過激さで、確信犯的・偽悪的に論を展開する。

特大号で両対談ともボリュームが有り、とても読み応えがあった。
「今日から始まる文芸の未来」という副題に相応しい充実に星5つ。

古井の小説は、舞台が成立した瞬間、
つまり、本来なら幕が上がる時点で小説が終わる、或いは初めに戻るという。
其処に至るまでを苦しい程考え詰めて一瞬の舞台に賭ける、
その様に書くのは古井だけだと大江は言う。

一方、大江は自覚的に、此の十五年間の自分の小説は、
登場人物の役柄を枠組みとして作ってしまっていただけで、
本質的な転換は無かった、と打ち明ける。

東日本大震災後の今程、沈黙の意味について考えさせられる時期は無い。
二人は、エウ・フェーミアーという古代ギリシア語を挙げる。
吉き前兆を告げるという意味を持ちながら、
同時に畏れ慎んで黙る事をも指す此の単語は、
吉兆の前には不吉な事、滅多な事を言うなと要請する。

文学の本質に似ている、と古井は指摘する。

そして、大江は、古井の『鐘の渡り』の中の一篇「方違え」について、
詳細に解説を加えてゆく。
失業した父親が八方を塞がれていると思い込み、
方違えで家族と共に一夜を過ごした話だ。
「其の日の内は、夜が明けるまで、大きな声で話してはいけない、
今何処にいるかも、なるべく思わないようにしろ、と、父親は家族に命じる。」
「互いに怪しんだら最後、折角此処まで来た方違えを踏み外して、
やがて一家の離散の道を辿りかねない。」

守れば幸いを招くというより、

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