天皇の料理番 [Blu-ray] の感想

脚本、演技、音楽、セット、どれをとっても素晴らしいドラマでした。
奇をてらった設定も無く、ただ一人の男の生き様をまっすぐに描いた脚本と、
それを自然体で演じきった俳優陣、中でも鈴木亮平さんの本当に命を削るような
鬼気迫る演技は、本作にまっすぐな芯を一本通してくれました。

パリの料理修行から帰国した佐藤健さん演じる篤蔵が、鈴木亮平さん演じる
病床の兄周太郎に、天皇の料理番になることを告げるシーンは我が事のように嬉しく、
涙なしではとても観ていられませんでした。

劇中何度も聞いた周太郎の「はげめよ」という言葉も今でも耳に残っています。

その素晴らしい兄をはじめ、父、母、兄弟、友、師、そして妻と子供達の
思いに支えられ、ただひたすらに研鑽し、何者でもなかった一人の青年が、
誰もが認める料理人となって行くこの物語は、今ではあまり観られなくなってしまった
まさに日本の正統派ドラマと言えると思います。

正直放送前にあらすじを見た時点で「古臭いベタな人間ドラマ」を想像していました。

そしてそれはある意味正解でした。

しかしその古臭いベタな人間ドラマは、製作陣の素晴らしい仕事と俳優陣の素晴らしい演技によって
我々の心を震わせ、深い感動を与えてくれるものになっていました。

こういう正統派ドラマこそ「名作」と呼ぶにふさわしいと思います。