近代の奈落 (幻冬舎アウトロー文庫) の感想
参照データ
タイトル | 近代の奈落 (幻冬舎アウトロー文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 宮崎 学 |
販売元 | 幻冬舎 |
JANコード | 9784344407404 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
第一作「突破者」も名著ではあるが、奥の深さ、対象の重さ、そして汲み取るべき思想の数々、という点で本書は優る。文字通り宮崎学の代表作となるだろう。
被差別部落を旅し、差別撤廃の第一線で闘ってきた歴戦の勇士を歴訪する。あるものは既に故人となり、あるものはいまだ健在である。いわゆる<同和利権>の存在が明るみになるなど、部落解放運動をめぐる昨今の環境は生易しいものではない。遅れてきた高度成長の果実を享受する姿勢は是としながらも、「自前」の運動を失くしてきた運動の未来に危惧の念を寄せる宮崎。そうした視点は、戦争に勝って差別を無くすというスタンスか、差別を無くして戦争に勝つ、というスタンスかという究極の二択の延長線上にある。そしてこの二択は独り差別の問題に留まらず、あらゆる「異議申し立て」の思想に随伴する問題でもある。
中上健次と坂口安吾をめぐる見解には異論が無いわけではないが、2002年下半期の名著に位置づけられるべき本である。
被差別部落を旅し、差別撤廃の第一線で闘ってきた歴戦の勇士を歴訪する。あるものは既に故人となり、あるものはいまだ健在である。いわゆる<同和利権>の存在が明るみになるなど、部落解放運動をめぐる昨今の環境は生易しいものではない。遅れてきた高度成長の果実を享受する姿勢は是としながらも、「自前」の運動を失くしてきた運動の未来に危惧の念を寄せる宮崎。そうした視点は、戦争に勝って差別を無くすというスタンスか、差別を無くして戦争に勝つ、というスタンスかという究極の二択の延長線上にある。そしてこの二択は独り差別の問題に留まらず、あらゆる「異議申し立て」の思想に随伴する問題でもある。
中上健次と坂口安吾をめぐる見解には異論が無いわけではないが、2002年下半期の名著に位置づけられるべき本である。