医療イノベーションの本質―破壊的創造の処方箋 (碩学舎ビジネス双書) の感想

　本書では，医療提供者・病院，保険者，患者のポジションに加えて製薬などの開発，政府などの調整役，医学部などの教育者がいかにヘルスケアでイノベーションを起こし医療を前進させるかについて書かれている．これまでのヘルスケアの産業構造ではなぜイノベーションが起きにくく，「破壊」する必要があるのか，破壊者と被破壊者はこれからどう動くべきかが著者らの研究をもとに整理され明快に示される．これだけ多くの情報量を一冊にコンパクトにまとめた本は他にないだろう．
　著者のクリステンセン教授の本に「イノベーションのジレンマ」や「イノベーションへの解」がある．これらを読んだことがある読者ならば以前の本で使われた例示やモデルが随所に登場するため理解の助けになり，逆に何が医療では異なるのかが実感できると思われる．無論，本書がクリステンセンの初めての本でも理解度に影響することはない．
　訳者である山本雄士先生は，ポーター教授の「医療戦略の本質」の翻訳もしており，本書と合わせてよめるとヘルスケアをよりマクロな視点で俯瞰することができる．
　すべての医療者および医療でビジネスを考える人におすすめしたい．