ゆりちかへ ママからの伝言 (幻冬舎文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルゆりちかへ ママからの伝言 (幻冬舎文庫)
発売日販売日未定
製作者テレニン 晃子
販売元幻冬舎
JANコード9784344416376
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » た行の著者

購入者の感想

 「自分が同じ立場になったとき、これほどしっかり語れるだろうか」
 筆を執ることが困難になった筆者の代わりに、彼女が録音した音声を文字起こしする作業を手伝った。

 2本のテープの中の筆者は、冷静で気丈な母としての言葉を、本を読むだろう未来の娘に確実に伝わるように、まるで文章のように考えながら語っている。
 同じ立場になったとき、おそらく僕にはできそうにない。きっと病気がもたらす痛みや治療の苦難に圧倒されて、文字となるような言葉を充分には語れないだろう。2本のテープを聞きながら感心していた。

 でも、ある日の再生を始めた時、無言のすすり泣きから始まった。文字起こしするのをやめた。
 すすりなきが数分間続いた。その後の言葉は「死にたくない。ずっと生きていたい。死にたくない」。泣き声交じりの告白だった。「家族とともにずっと過ごしていたい」。
 文字起こしができなくなった。夜の病室で一人で録音機に向かっていた彼女の孤独と恐怖は、彼女以外の誰にも分からない。分からないけれども、集中して聞いていた僕には、それが伝わってきて、「コレハ、シゴトダ!」自分に言い聞かせなければ、それ以上の文字起こしができなくなった。「コレハ、シゴトダ!」言い聞かせて作業を続ける。涙が流れて止まらなくなった。

 何度もテープを巻き戻し、避けて、最も聞きたくない部分を、どんな言葉も聞き漏らさないように、何度も何度も聞いた。本になった今、あの部分を読むと、自分の中に恐怖と孤独とが再生される。

 彼女は今も病床にいる。家族との時間を考えながら、日々を生きる。
 わが子のために書いた本だが、その目的とは違う読み方ができる。彼女は、病床から自力で離れられない。しかし「人に伝えたい」という意志が周囲を動かし完成したのがこの一冊だ。強い意思が本にこもり、読む人が力を得られる不思議な本でもある。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

ゆりちかへ ママからの伝言 (幻冬舎文庫)

アマゾンで購入する
幻冬舎から発売されたテレニン 晃子のゆりちかへ ママからの伝言 (幻冬舎文庫)(JAN:9784344416376)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.