iPS細胞―夢の再生医療を実現する (ニュートンムック Newton別冊) の感想

興味を引いた内容をトピック的に。
．２００６年８月、山中はマウスiPS細胞（人工多能性幹細胞ー体細胞を初期化する）を創り出すことに成功した。
２００７年１１月２０日、山中とアメリカのトムソンはヒトiPS細胞の作製に成功した。このiPS細胞は、時計の針を巻き戻す（初期化）。そして、胚由来のES細胞と違い拒絶反応を引き起こさない。
．遺伝子が固定されて分化するのはエピジェネティクスと呼ばれる核の化学的変化による。それは、ヒストン修飾及びDNAのメチル化であり「初期化」とは、これらを消すことである。
（これは、最近研究が進んでいる環境からの作用による後天的形質変化つまり、DNA配列変化を伴わない遺伝子発現変化の仕組みでもある。そして、それは遺伝する）
．山中は、EＳ細胞の中で活発に働く因子を突き止め、同じ因子を皮膚細胞（入手し易い）の中に送り込めば皮膚細胞はES細胞のような状態（初期化）に変わるのではないかと考えた。幸い、理化学研究所にあったデーターベースを解析してヒト遺伝子二万数千個から１００個程の遺伝子リストが出来た。更にそれから四年ほどかけて２４個を絞り込んだ。その後、山中ファクターと呼ばれるようになった４個の遺伝子に辿り着いた（初期化因子）。（その後、それは３個となったがアメリカのトムソン博士のそれとは二個が共通である。山中の場合、皮膚からトムソンは胎児や新生児の細胞からの違いがある。現在は化学物質による方法もある）だが、今の処どうしてそれにより初期化が起こるかという「仕組み」は解っていない。
．精子は、高度に専門化した細胞であるが卵子の中に入ると精子由来のDNAのメチル化が急速に消される（初期化される）ので未受精卵の細胞質には初期化因子が含まれていると想像されている。
．iPS細胞とガン細胞（いずれも無限に増殖する）は、紙一重である。そして、レトロウィルスを用いて遺伝子の導入を行ったiPS細胞は導入した遺伝子が悪影響を及ぼす可能性がある。但し、ウィルスでない他のベクターを使う方法もある。

この他、この本には再生医療、創薬研究、血液製造等についての最新の動向もある。