経済行動と宗教: 日本経済システムの誕生 の感想

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タイトル経済行動と宗教: 日本経済システムの誕生
発売日販売日未定
製作者寺西 重郎
販売元勁草書房
JANコード9784326550715
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

筆者はこれまで制度分析などで成果を上げてきた経済学者である。
このたびは、日本経済思想史や日本経済史にまたがる分野まで手を伸ばし、さらにイギリスと比較して論じている。

現在の日本経済は、ものづくりが中心で、金融資本主義は英米ほど発達していない。
筆者は、この原因を鎌倉新仏教に求めている。

「われわれの基本仮説は、仏教における易行化が、仏教の修行に代わる知の活用方法として求道主義をもたらし、
それが日本人の経済行動の特質の基礎をなしたということである」(228頁)

天台本覚思想や法然は、むずかしい修行を必要としないと説いたので、この結果日本の職人は、ものづくりを懸命に
行うことで「求道」を行なうようになった。さらに山崎正和のいう「柔らかい個人主義」(248頁、445頁下段)になったと
述べるのである。

また、商人たちは「求道の結果生まれた高品質な製品やサービスの生産を需要に結びつけ」(272頁)、
需要主導型経済システムを日本に構築したと主張する。

これに対して、イギリスの個人主義は、「被造物化の拒否」(81頁)が重要な契機になり、供給主体の経済構造に
なったと筆者は説く。

以上が本書の主な内容であり、非常に意欲的な論考であると言える。
が、しかし、残念ながら日本論としては、ほとんど“突っ込みどころ満載”であった。

本書は末木文美士や田村芳朗など、日本仏教史の研究成果に乗っかって仏教を論じるだけである。
何か具体的史実を資料に基づいて紹介しているわけでもなければ、法然や親鸞の言説を分析しているわけでもない。
その意味では、本書は基本的な論証作業、説得作業をしていない。

さらに、筆者は「仏教は知的鍛錬を基本とする『悟り』の宗教である」(225頁)と説く。
これは不十分であり、少なくとも日本仏教の基本は、「自ら悟り、他を悟らしめる」の二つであろう。
後者の概念、つまり利他行や、社会貢献、正法の概念が本書には最初から最後まで完全に欠落している。

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