あゝ野麦峠―ある製糸工女哀史 (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトルあゝ野麦峠―ある製糸工女哀史 (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者山本 茂実
販売元角川書店
JANコード9784041433010
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

日本の外貨獲得を担い、戦前期の軍需・綿織物・重工業などを支えたのがこの本に描かれている製糸業の工女たち。
飛騨高山から厳しい野麦峠を越えて岡谷に出稼ぎに行き、年末の吹雪の中を命がけで故郷に帰り給金を持ち帰る、
自殺、私生児を産む、検番の厳しい管理、そうした哀歌を生き生きと再生したのがこの本です。
高山の村々を何年もかけて歩き回り、360人もの工女だった人々に聞き取りを行い、所により物語り調で
工女の様子を再現したり、糸ひき唄に注目するなど、オーラルヒストリーの価値を高める名作です。
聞き取りは非常に細部にわたり、統計調査なども詳しく、図表も多く掲載されています。
所により物語的な描写をし、工女への同情を見せるする反面、論理的・冷静に生産者の評価や製糸業の経済的な
分析をし、農村の惨状に比べ「相対的には厳しくない」とするなど絶妙なバランスを保っています。
目を覆う悲惨で痛々しい出来事が多いにも関わらず、工女たちの生き生きした様、歴史を甦らせ、
読み出したら止まらなくなります。この本は一気に読み進めてしまいました。
非常に多くの視点から歴史が再現されています。野麦峠を越える様が一般的に、また具体的に描かれ、
峠の鬼ばばぁの人柄までも伝わってきます。また、キカヤ(工場)での様子、工女たちの背景、山一争議、
製糸工場の経営者、製糸業の分析などあらゆる視点が含まれています。
一日中働き、命がけで峠を越え、結核にかかれば追い出されひた隠しにされ死を待ち、一方で生き生きと糸ひき唄を
歌い、粋で活力にあふれる工女たち、そうした歴史を多大な努力と素晴らしい描写力で細部まで見事に甦らせた著者は
本当にすごい、と思いました。歴史を学ぶ人、読み物として読みたい人など、どんな人も読んで満足を
得られることは保証します。読み物としてもおもしろい。素晴らしい本なのでぜひ読んで欲しいです。0

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