「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) の感想

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参照データ

タイトル「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
発売日販売日未定
製作者エマニュエル・トッド
販売元文藝春秋
JANコード9784166610242
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 最初に一言、面白かったです!!
 本書は、「最後の転落」で人口統計学的手法で、ソ連の崩壊を予想したエマニュエル・トッドの、
 比較的最近のインタビュー(2011年11月~2014年8月)を集成した日本独自の著作になっています。
 インタビューですから比較的自由に発言でき、かつトッドがフランス人ということもあるとは思いますが、
 こんな見方もあるのかと、考えさせられる部分が、少なくありませんでした。
 ソ連の退潮による冷戦の崩壊、ECの誕生、そしてユーロの導入、これらにより一番利益を得たのは、なんといってもドイツです。
 経済的覇者になったドイツ、EUはまるでドイツを中心とした一つの国家にも見えます。
 トッドによると、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、等のドイツ圏、自主的隷属国、事実上の被支配国を入れた、
 いわゆる「ドイツ帝国」の人口、実質GDPは、既にアメリカのそれらを上回り、アメリカと十分対抗できる力を蓄えているようです。
 事実、ドイツとアメリカは、意見を異にし、衝突を始めているような場面も、最近はよく見られます。さらには、中国との接近・・・・・。
 そして、本来、ドイツの独走に歯止めをかけなければいけないフランスが、その役を成す状態になっていないところにも大きな問題があります。
 さらに、ウクライナ問題、考えてみればロシアは、自国の安全と平和のために、当然の事をしているだけだともいえます。
 そして、ロシアと日本が接近するのは、エネルギー的、軍事的観点から見て論理的である、等日本についても鋭い指摘が随所にあります。
 最初に書いたように、トッドがフランス人で、多少ドイツに対してやっかみ的なところもあるとは思いますが、
 EUの中で居住する者にしか解らないようなことが沢山出てきて、目を開かれる思いです!!

「冷戦崩壊とユーロの果実はすべてドイツが受け取り、欧州はドイツ化した。ロシアが崩壊してユーラシアを獲れば米国と衝突するかもしれない」という、トッドらしい大胆な仮説だ。読む価値があるのは最初のインタビューだけだと思う。でもこの1本だけでいいくらいの破壊力がある。あとの7本は書籍化のためのおまけのようなものだが、それでも眼から鱗な冒頭のインタビューは、欧州の大局を考える際に非常に参考になる。

冷戦終了とユーロ導入で、欧州の経済が単一化されたことで、東欧の安くて質の高い人材を使い、債務危機で割安となった通貨で稼いだドイツは欧州全域の債権者となった。各国とも文句が言えず隷属している「ドイツ帝国」だと著者は言う。米国の統制も効かない。ウクライナでロシアが譲歩すれば、ドイツ帝国はウクライナを飲み込んでますます東へ広がる。ドイツは規律を重視する権威主義の大国であり、ドイツが支配するEUは諸国民を閉じ込める牢獄だとまでいう。さらには崩壊したロシアを飲み込んだドイツは巨大ブロックとなり米国と衝突せざるをえない、と結論づけている。ロシアの弱体化こそ警戒すべきなのに、冷戦を引きずる米国は、とりわけロシアを敵視するブレジンスキーの愚かな戦略のせいで、ドイツ擡頭という現実を見ようとしない。トッドは、ドイツは米国の脅威であり、盗聴するのは当然だという。

著者自身が文春に売り込んだというだけあって、「ドイツのウクライナ拡大でロシアと険悪になり、日露の関係は阻まれているが日露接近は必然」「韓国が日本への恨み辛みのゆえに、アメリカの戦略的ライバルである中国と裏で共謀し始めている」欧州情勢の話なのに日本がよく出る。歴史問題で日本を追及する韓国の意図が、米国の国際戦略に都合が合わないのは、大陸の反対から見てもわかるのかと感心した。

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