職業は武装解除 (朝日文庫) の感想

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タイトル職業は武装解除 (朝日文庫)
発売日2015-05-07
製作者瀬谷ルミ子
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022618283
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 国際政治情勢

購入者の感想

「日本が言うから、信頼して武器を差し出すんだ。アフガニスタンの民を無差別に空爆しているアメリカやイギリスに言われたら、撃ち殺してやる」(武装解除の説得に応じたアフガニスタンの兵士)。

ボスニア・ヘルツェゴビナ、ルワンダ、シエラレオネ、アフガニスタン、ソマリア、他。世界第一級の紛争地帯のオンパレードである。高校三年生のときにたまたま目にしたルワンダの難民キャンプの写真がきっかけで、その後若くして世界に飛び出し世界を駆け巡って、略してDDRと呼ばれる武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)の専門家となった女性が、自らの貴重な経験を綴った本である。

互いに殺し合い憎みあってきた紛争地帯の人々にとって、「和解」という言葉は、日本であれば犯罪で殺された被害者家族が加害者と握手するような、外部の人間が軽々しく口に出すべきではない重さと葛藤がある。だから著者は、「皆が手を取り合って仲良しでなくても、殺し合わずに共存できている状態であれば、それもひとつの『平和』の形であり得る」と説く。ただ祈っていても平和は来ない。武器を捨てさせることも簡単なことではなく、根気強いタフな交渉と、どのようにすれば説得できるかという事前の調査及び作戦が必要だ。「できないことは絶対に約束してはいけないし、期待を持たせてはならない」という。和平を実現するためのやむを得ない手段として、紛争中の戦争犯罪を追及しないという残酷なトレードオフを認めなければならない場合も現実にある。せっかく武装解除が成立した空白地域を狙ってアルカイダが進出してくることもあるようだ。

紛争地帯でもっとも犠牲になりやすいのは、子供と女性だ。「子ども兵士」は、大人に抵抗する力がなく、洗脳しやすく、敵に警戒されにくく、身軽で目立たないからスパイや運び屋にも適しており、多くの国に存在する。あまりに厳しい現実を目にして著者は語る。「両親を殺され孤児になった子どもと、三十人を殺した子ども。手を差し伸べられるべきなのは、どちらだろう?」と。子供や女性は虐待の対象にもなるし、イスラム圏では女性の立場は特に弱い。また、ソマリアでは民兵に襲撃されて命を落とすのは交通事故に遭うようなものなのだという。

悲壮で崇高な理念を掲げた方が自己犠牲精神をもって誰もやりたがらない仕事に当たられ
ているのかと思って読んでみると、それとはまったく違って驚いた。

もちろん、筆者に理念がないというわけではない。でもそれよりも驚かされたのは、とことん、
ただし客観的に自分を見つめ、その上で調査して理解した世間のニーズとを刷り合わせる
という徹底したリアリズムと、方向を定めてからは可能性に賭けて飛び込んでいくバイタリティ
との両輪である。

何かを選ぶときには別の何かを犠牲にせざるを得ず、また失敗や反省もあるとしても、総合的
に考え抜いて、予測して行動した結果であれば、次に生かせると教えられた。
だから本書は、誰にとっても自分の能力と意志の範囲内で適用できる指南書となっている。

何より悲壮感がないのがいい。パキスタン軍のセクハラ(?)エピソードも、こんなふうに
語られると、不謹慎ながら笑わずにはいられない。

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