目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) の感想

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参照データ

タイトル目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
発売日2015-04-16
製作者伊藤 亜紗
販売元光文社
JANコード9784334038540
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

私は資格障碍者です。その立場からのコメントとして、書きたいと思いますが、実は著者の書いた内容はけっして新しい考え方だとは思わないと言うことです。
逆のいい方をすれば資格障碍者の多くがこのようなことを言いたいのではないかと思います。
よく「目が悪いのに○○ができてすごいねえ」等と言われます。
もちろんその方の素直な気持ちでけして悪意はないし、むしろ好意的な言葉なのだと思います。
しかしながら言われた側としては、「何を普通のことなのに」ということが多いです(とはいえ、それを自慢する人もいますが…)
目が悪いから、見えないから「見えないなりの生活をする」だけで、それしかしかたないというのが正直なところです。というと投げやりに聞こえるかも知れませんが、現実を受け止めた上で、その状況において、よりよい生活を送る工夫をしているといえると思います。
ただ資格障碍者の側にも問題があり、自分たちは普通だ」みたいなことを言いますが、見えるはずの目が見えないということは、良いか悪いかは別として、「普通ではない」ということを自覚しないと行けないでしょう。それを前提として、議論を進めないと議論がかみ合わないのが当然だと思います。この著者的な表現するなら「社会は見える人用にできている」わけですから。
長くなったので、最後にまとめますが、「「社会は見える人用」として、普通ではない資格障碍者が生活していくためにはいろいろな工夫が必要ですし、福祉機器や最近進歩のめざましいIT機器の活用は重要です。音声化ソフトのインストールされたパソコンは私たちの生活を飛躍的に変えましたし、iPhoneやandroidスマートフォンの活用によりとても便利になりました。しかしながらそれだけでは残念ながら不十分です。そこを解決するのが下記の部分で、そのまま引用させていただきます。

「自立とは依存先を増やすことである」と。自立というと、依存を少なくしていきゼロにすることだと思いがちです。しかし、熊谷さんはそうではないといいます。周りの人から切り離されることではなく、さまざまな依存可能性をうまく使いこなすことこそが、障害者の自立である、と。

すごく面白く読みました。
「障害を個性として受容し、共生しましょう」と言うのは簡単ですが、どうしていいか距離感も難しいし、ノウハウもわかりません、そもそも「ノウハウ」なんて言うだけで失礼なんじゃないかという偽善も頭をよぎる。
本書はそんなジレンマを、実にフラットに客観的に、かつ好奇心いっぱいに、でもすごく温かな視線でほぐしていきます。
4人のロービジョン者との対話や行動を通して視覚障害者の身体観を観察し、著者なりの解釈を論じた書です。
著者(うら若き女性ですが)は、一人のロービジョン者から言われた「見える世界ってのも面白そうだね」という言葉が、当初感じていた(我々にもある、冒頭に書いたような)もやもやを取り払ったと言います。それを我々も読むうちに追体験できます。
・「情報」を「意味化」する力
・点字は触覚ではなく視覚である
・感覚器とそれが持つ(とされる)感覚は一対一対応ではない
・視覚障害者の美術鑑賞、一緒に観るということ
目からウロコが盛りだくさんです、とくに視覚に携わる医療従事者は必読です!

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