日本建築思想史 (atプラス叢書10) の感想

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タイトル日本建築思想史 (atプラス叢書10)
発売日販売日未定
製作者磯崎 新
販売元太田出版
JANコード9784778314217
カテゴリジャンル別 » アート・建築・デザイン » 建築 » 日本の建築

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 本書の内容を簡潔に要約すると、今日の「建築」は、かつて自身が『建築の解体』でホライン、アーキグラム、ムーア等の建築家について論じながら提起した「主題の不在」がいよいよ徹底化され、「誰でもいい。誰かが造っている」という状況にあるというようなものです。
 かなり乱暴なまとめではあるものの、とはいえ、実際、たったそれだけのことを語っているに過ぎません。
 しかし、今さらそんな児戯に類するようなことを言いたいがために、どうしてこれだけの言葉が費やされないといけないのか、かなり理解に苦しむところではあるのですが、あえて身もふたもない言い方をすれば、磯崎新の思想の根っこの部分には、濃密な「アポカリプス願望」があって、それを建築という2流のジャンルの中で、まさに建築的に風呂敷を広げたいということだけなのかもしれません。
 磯崎新の処女作が「新宿ホワイトハウス」と呼ばれた建物で、そこに集う前衛芸術家たちとの交流の中で、自らのアイデンティティの基礎を形づくっていったというのも、その意味では腑に落ちるものがあります。
 前衛芸術が、その始原からある種の「アポカリプス願望」と強く結びついているということは、とりたてて指摘するまでもないことですが、ただそのメタファーとして、「爆発」が少なからずイメージされてきた歴史には、若干の注意を払うべきように思われます。
 それは「爆発」というイメージは、作品そのもの、表現そのものが「自己言及」の臨界点に達したときに、その表現者自らまでも、易々と飲み込んでしまう危うさを併せ持っているということです。
 磯崎新にとっての「爆発」のハイライトは、彼がコミッショナーを務めた第6回国際建築展ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館、阪神淡路大震災の瓦礫を積み上げたインスタレーションであることはいうまでもありません。
 磯崎新はそのパンフレットの中で「楽観的な建築プロポーザルよりもむしろ、この激しく傷つけられた都市の廃墟こそ、今日の日本建築の現状を的確に語るものと感じた」と記し、それまで自明とされてきた「建築」のあり方を根源から問い直しました(ということのようです)。 
 実際、この「亀裂」と題された展示は、来場者たちを圧倒し、「金獅子賞」を受賞しています。

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