街場の読書論 の感想

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参照データ

タイトル街場の読書論
発売日2014-01-15
製作者内田 樹
販売元太田出版
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 思想・社会 » 思想

購入者の感想

 分厚いこの本は、大学院の講義録を元にした『街場』シリーズではなく、内田樹氏が自分のブログで既出した文章を集めたものである。内容も書評、自書の後書きの再録から、(気さくな)エッセイ、持論の著作権論と多岐にわたる。手に取るまでは本格「読書論」だと思っていたので少々がっかりしたが、他人の本棚を覗く楽しみに抗しきれずに読み出した。
 どこからでも読み出せるが、しかし頁をめくっていくうちに次第に衿が正され姿勢も良くなっていくのに気づく。自分がこれまで考えても見なかった論旨の発展や転換、それにハッとする文章のキレに唸ってしまう。ウチダセンセは何を書いても、人の心を打つなにものかを有していると認めざるを得ない。
 特に胸を突かれたのは次の文章である。
 「知性の切れ味というのは、平たく言えば、「誰かを知的に殺す武器としての性能の高さ」のことである。でも、その性能は、「知的にも、霊的にも、物理的にも、人を損なってはならない」という禁戒とともにあるときに爆発的に向上するのである。そういうものなのである(p126)」
 本を読む程の人なら誰でも自分の知性を高めたい。その高さを自分に証明できるのは、人の見識を批判する時であろう。自分をきらめきさせたいばかり他人の見解を切って切りまくるというのは誰にでもありがちなことだ。
 だが先生はその際に最も大切なこととして、「人を損なってはならない」という。話が飛ぶようだが、哲学でも文学でも最高の理念は「愛」である。人はこれを極めるために4千年に亘って格闘し、崇高な理念に到達する過程で多くの同学の士を傷つけ、むしろ「愛」を遠ざけてきた。内田先生はその不毛さを解りやすい言葉で警告していると読める。
 このほかにも珠玉の文章は種を尽きない。私はいつの日かこういった先生の他書を含めた「至言」を集めて、内田語録として公表してみたい。自作についての著作権を主張しないというのが先生の持論だから問題ないだろう。これはいつの日か『ラ・ロシュフコー箴言集 』並みの、しかももっと温かい語録として評判を呼ぶに違いない。 

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