増補 エロマンガ・スタディーズ: 「快楽装置」としての漫画入門 (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトル増補 エロマンガ・スタディーズ: 「快楽装置」としての漫画入門 (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者永山 薫
販売元筑摩書房
JANコード9784480431691
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

本書は個別のエロマンガや作者に着目して掘り下げるのではなく、多くの作品からそれぞれの時期やエロマンガを取り巻く状況を分析する試みである。だからどの作品も作者も断片的にしか扱われないので相当、読みにくい作品になっている。ただ、基本的には読者のエロへの欲求とそれに応えようとする無数の作者達のマンガ表現を通じたキャッチボールを描こうとしたと思えばよい。だから知らない作品や作者がいても気にする必要はない。
漫画には様々なジャンルがある。4コマ、スポーツ、恋愛、政治、趣味など。対象も幼児向けから高齢者、女性向けもあれば男性向け、少女向けもあれば少年向けとその間口は広い。それぞれにミームがあり、歴史があり、そしてその陰の半身としてエロマンガが存在する。
本書はエロマンガの黎明期から現代にいたる40年ほどを個々の作品と作家を通じて描き出している。基本的には読者は性的欲求を持て余し気味の男性という前提で、その欲望の幅広さを作家が作品という形で発掘していく有様が業界の消長とともに語られる。
その消長には、宮崎事件に端を発するロリコン弾圧や東京都の表現規制、そして国際的な児童ポルノ規制という外的要因も触れられている。いや、後半、エロマンガの社会的な存在感の増大とともに外的要因の方が目立ってくる。
さらに、目立たないが一貫してエロマンガを実質的に規制してきた流通という枷にも触れられている。成年マークはその始まりだが、それ以前にもそもそも商売として普通の出版社が取り扱わないから自前の流通経路として自販機を開拓した前史は興味深い。今はコミックマーケットやネットコミックが有力な媒体となっているが、かつての自販機本のいかがわしさはその比ではない。一方で大手コンビニの販売コードは厳しいし、Amazonも同様に厳格だ。「18歳以上ですか」という警告ページが出るのだから法的規制はクリアできるはずだが、ビジネスを円滑に進めるためには妥協も必要ということだろう。

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