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タイトル不可能
発売日販売日未定
製作者松浦 寿輝
販売元講談社
JANコード9784062170284
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者

購入者の感想

本書の主人公「平岡」は「事件」以来獄中で27年を過ごし、出獄してからは
世間を避ける老人となってひっそりと暮らしている。
有り余る資産を元に伊豆に塔を建て、あるいは自宅の地下に
不思議な彫刻群を並べて、老いの日々を過ごしている。

本書の前半では平岡は大きな行動に出ず
スコットランドに旅して当地の自然に浸ったりする
(この場面の描写は芳醇で美しい)が、後半になると
ROMSという組織に関わり、異常な事態に巻き込まれていく
(『春の雪』のパロディめいた場面には笑ってしまった)。

だが「平岡」がときに洩らす現代日本に対する批判は
それほどスケールの大きいものではなく、若干の違和感を覚えてしまった。
「平岡」をもう少し時代と対峙させ、たとえばネット社会、
アニメ・ゲーム文化の台頭など1970年の時点では想像できなかった状況を
「彼」らしい冷徹な論理性と絢爛たる皮肉で語るような描写があれば、
後半に禍々しい事件を登場させなくても、
もっと挑発的で面白くなったように思う。
「三島」の才能は「事件」の存在を抜きにしても、
充分過ぎるくらい圧倒的なものだったから。

だが、他の方のレビューにもあるように、
著者は「三島を借りてきただけ」で「老人」を主人公とした本作は
「時代との対峙」とは別のところに主眼が置かれているのでしょう。
松浦氏が本作にこめた哲学を私が把握しきれなかったのかもしれません。

前半の美しい文章には心を打たれたので、★4つの評価です。

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