戦争と性 の感想

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タイトル戦争と性
発売日販売日未定
製作者マグヌス ヒルシュフェルト
販売元明月堂書店
JANコード9784903145488
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 女性学 » 女性史

購入者の感想

本書を編纂したヒルシュフェルトの本心を伝えた言葉が第三篇「戦争中の性生活」169ページに書かれている。「軍隊式に組織された売淫が世界戦争のいちばん暗い一章であることは、確かである。売淫によって性愛も、美も、人間の純粋感情も、いっさい嘲り飛ばしてしまうもっとも低級な欲求に突き落とされてしまったのである」

人間が人間らしい社会生活を営むためにはコントロールが不可欠な性欲と、戦争という環境下での影響を克明に考察しているところが秀逸。ここには口当たりの良い綺麗ごとは書かれていない。それは歴史が示している事実から冷徹に統計を取ろうとする姿勢と、将来に向けて問題の解決策を見出すべくヒルシュフェルト研究班の聡明な意志によって記述されたものだ。それゆえ第一篇「女について」を女性が読み通すことは辛いだろうし、侮辱されていると感じるかも知れないが、ここに採り上げられているデータは決して稀なサンプルではなく、歴然とした全体の傾向を示していることも認めざるを得ない。

ひとたび戦争という事態になれば、生と死の狭間で極限状態に曝され、禁欲を強いられる兵士達は必然的に精神的、肉体的な代償行為への強い欲求に駆り立てられる。第一次世界大戦中、軍隊内での性病蔓延による戦力低下や、規律を逸脱した戦場周辺でのレイプ等を未然に防止するために娼家を軍によって管理させ、マニュアル化して兵士を統制した国は当時のヨーロッパではドイツだけだったようだ。掲載されたデータでは軍隊内での性病の罹患率は、それを放置した他の列強国を大きく引き離して最低限に抑えられている。皮肉にもさすが管理の国ドイツの面目躍如たるものがある。

そのマニュアルは兵士が娼家に行くと 1)軍隊手帳の提示と衛生兵による局部の検査、もし罹患が発覚すれば所属部隊への通報、入室は許されない。それ以外の正常者はプルタルゴール及びワセリン塗布の予防処置 2)順番待ち、呼び出しに応じて指定の部屋に入室 3)行為と料金の支払い 4)別室に移動して衛生兵による消毒と放尿検査 というプロセスが避けられない。勿論この方法以外の闇の売買春は禁じられていたが、将校クラスには別棟が用意され、彼らが一切の検査から免れていたことがこのシステムの盲点として指摘されている。

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