日本の雇用と中高年 (ちくま新書) の感想

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参照データ

タイトル日本の雇用と中高年 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者濱口 桂一郎
販売元筑摩書房
JANコード9784480067739
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

この東大出身の先生の本は名著である。日本はちっとも解雇しづらくなっていないし、この本の丹念な調査によっても実際に明らかにされている。実情を一言でいうと、「日本人の周囲を気にする性質に付け込んだ、より狡猾な退職強要がおこなわれているだけであり、制度が形骸化していることは明白である。

日本の雇用と労働法 (日経文庫)
この本で、日本の雇用の(現場での)あり方と、労働法制の現代史が分かります。
戦中の総動員体制や、戦後の経済の発展と労働法制の変遷など、幅広く経済の現代史にも触れながら、
現在の日本の雇用のスタイル(新卒採用からはじまり、ジョブローテーションや広域にわたる転勤、
定年退職まで)の成立を説明しています。
また、本書で、著者の主要な主張である「メンバーシップ型からジョブ型へ」という改善の方向が
語られています。

若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (中公新書ラクレ)
この本では、『日本の雇用と労働法』と同様に、日本経済と雇用、労働法制の関係について概要を
確認しつつ、若者の雇用に焦点を当てています。
さらに、本書では、若者を労働市場に送り込む側、つまり教育システムのあり方についても言及があります。
子を持つ親、教育に関わっている人、企業の採用担当者、人材育成担当者には、ぜひおすすめしたい
素晴らしい本です。

そしてこの『中高年』では、日本の雇用と社会保障の関係について述べられています。
相変わらず著者の視野が広く、とても勉強になりました。
著者が本書で繰り返しているのは、「無駄な世代間闘争をやめましょう」ということです。誰かが
一方的に損をしていると考えて、誰かを罰すればよい、という考えではダメだ、というのです。

欧米のまず「職」ありきで、その「職」に対して求人する「ジョブ型社会」に
対し、会社にふさわしい人を一括で採用し、適当な「職」をあてがい、スキ
ルを習得させる「メンバーシップ型社会」。
本書の主題である中高年問題を解決するためにも、ジェンダーや外国人
の就労の問題を解いていくためにも、「ジョブ型社会」への移行が望ましい
という著者のこれまでの主張を、労働法制の推移や判例から丁寧に解説
してくれる。
労働問題の責任ある唯一の答えは「長く生き、長く働く」を目指すことしか
ない。しかし、「メンバーシップ型社会」では、その特徴である年功的賃金
故に、中高年の賃金が成果と比して釣り合わないという理由から、早期退
職を促されたり、退職を強く促される境遇に追いやられることもしばしばで
ある。これらを解決するためには、「ジョブ型社会」に移行せざるを得ないと
著者は主張する。
そのとおりなのかもしれない。ジョブ型社会になることで継続雇用の矛盾と
いう今後避けては通れない大問題の解消にもつながるように思う。とはいえ
メンバーシップ型社会では、安定雇用という名目から「生活のセーフティネッ
ト」という側面への注目が大きく、一気に転換するのは困難と思われる。
いかに折り合いをつけていくのか、考えさせられる。

中高年の雇用問題(解雇問題)について、コンパクトに解説しています。

雇用政策に関する日本と欧米との違いや、日本型雇用システムの変遷の歴史、解雇や配置転換、降格についての裁判例など、詳細な解説が多岐に渡って続きます。文体は平易で、専門的な用語も少ないのですが、趣旨を理解するには、腰を据えて読むことが必要です。

結局のところ、中高年の雇用問題は、最後の第五章に集約されるように思います。

従来の年功序列型賃金は、家族手当などと同様、子供の教育費などの増加をカバーし、標準家庭の生活スタイルにマッチしていた。
そのため、本来は社会福祉として国が整備すべき扶養手当は、不十分なままになってしまった。
ところが、不況が長引き、企業はコスト削減のため、年功序列型賃金や各種手当を止め、相対的に賃金の高い中高年を、リストラし始めた。
賃金が高いのは、社会福祉的な費用を企業が負担していたことが一因であるが、企業側は(世の中も)、「あなたの能力が賃金に見合っていない」という、個々人の問題として扱っている。
(副作用として、資格取得や勉強会が流行ります)

賃金制度をどう設計するかは、各企業の裁量ですが、扶養手当の拡充は、少子化対策とも関連して、国が考えるべき課題でしょう。

政府の労働関係の会議や新聞等メディアによく登場する濱口桂一郎氏による、4作目の新書です。
今回も歴史的パースペクティブと国際比較を大切にしながら書かれた本書は、若者が問題となる欧州とは反対に日本では中高年がリストラ等で社会的問題になってきた理由を根源から解き明かしてくれます。そこでは中高年と若者のどちらが損か得かというのは意味のない議論だとよくわかります。当初ジョブ型を志向していた日本の労働市場政策が、時代の変遷や景気状況とともに、結果として内部労働市場にかなり傾斜していく様子、その中で生活を抱えながら生きていく中高年労働者の姿が浮かび上がってきます。そして、著者は不毛な世代間対立を超える処方箋として「ジョブ型」正社員を提示します。巷にはジョブ型への危惧も多くありますが、なぜジョブ型かを知るためにも必読の一冊です。また、政府の公式文書の紐解き方も一級品です。最後に少し触れられている「社会政策」の復権には、私も諸手を挙げて賛成します。まっとうな政策とは何なのかを読者一人ひとりに問いかけてくれる本書の読みやすさは、『日本の雇用と労働法』とhamachanブログの中間かなと個人的に思いました。0

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