江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫) の感想

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参照データ

タイトル江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)
発売日販売日未定
製作者江戸川 乱歩
販売元光文社
JANコード9784334738204
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

収録されている作品は「押絵と旅する男」「蟲」「蜘蛛男」「盲獣」の4篇である。元々高校生の時に江戸川乱歩にハマって片っ端から作品を読んだのだが、これらの作品を読んだ記憶はなかった。一時夫婦で魚津の蜃気楼を見ようと5月から6月にかけて毎年のように通った時期があって、家内がこの本を見つけて買っていた。

「押絵と旅する男」は、昔のすいたガランとしたローカル列車に乗ったことがある人なら、それも夕方近くに乗ったことがあればよけい雰囲気がわかるだろう。単調でリズミカルな線路の継ぎ目の音を響かせながら、車内の電灯と空の明るさが同じくらいの夕闇が迫る中、窓側はまだ明るいが通路側はオレンジ色の照明を帯びてやや暗い。その中で語られる話なのだ。
「蜘蛛男」は探偵小説らしい作品なのだが、著者が中盤であまりにわかりやすいヒントを描写しているので、犯人がほとんどわかってしまい、そこで作品内でも犯人がすぐに暴露されればいいのだが、しばらく引っ張るので白ける。
「盲獣」は著者本人も認める「エログロ」の変態もので、全集に入れたくなかった。特に終わりの方の「鎌倉ハム大安売り」という章は著者自ら吐き気を催すほどで、全集では削除したくらいである。
「蟲」もエログロなのだが、自ら失敗作だと認めている。

本全集全巻についてのレビュー。乱歩没後、講談社より度々全集が世に出、3度目の『江戸川乱歩推理文庫』に至ってはついに幻の『貼雑年譜』までも刊行。
しかし『推理文庫』の内容にはいささか問題があった。書中にある「初出時の原文のまま掲載」が売りである筈のテキストが実はそうではなく、
戦前軍部により扇情的と見なされ削除・訂正を余儀なくされた箇所は手付かずのままだった。

あれから10年以上の時が流れ、光文社より最強の布陣で新『乱歩全集』がベールを脱ぐ。
前述の削除箇所を全復元のみならず、初出以来のテキストの変遷を徹底比較した「解題」、乱歩小辞典と言ってもいい「註釈」。
「解題」「註釈」「解説」だけを目当てに購入しても全く問題ない。監修者はミステリーファンならその名を知らぬ者はない新保博久と山前譲。
両氏を乱歩邸に通わせ膨大な旧蔵書のデータ化を指示した故松村喜雄氏が生前切望していた真の全集がついに実現した訳だ。
強いて言えば巻末エッセイ「私と乱歩」を全て小林信彦氏に託し、全集では収録しきれない編集者乱歩の隠された側面や作品論を展開してくれたら・・・とも思うがこれは贅沢と言うもの。
資料性の高さ、デザイン・造本の魅力、比類なき全集である。密度が濃いという意味では将来これを超える『乱歩全集』は果たしてあるだろうか?

(追記)残念ながら第4巻初版の「孤島の鬼」にてごく一箇所のみ編集部によると思われる語句の手入れが発見されている。当初の方針どおり必ず再版で訂正するべし。0

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