十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争 の感想

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参照データ

タイトル十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争
発売日販売日未定
製作者峯村 健司
販売元小学館
JANコード9784093897549
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

世界の大国の中で、人口の多さだけを見ても、中国を治めることが、一番難しいと思う。その中国のトップに上り詰めた男、習近平。北朝鮮の金正恩に圧力をかけるように、要請されているが、恐らく自国の難題に対応することで、手一杯の状態なのだろう。習近平が権利への階段を、踏みはずさないように、慎重に慎重を重ねてステップアップして来た事情を、多方面からの情報を分析して、わかりやすく書いている。現場主義に徹し、自分で集めた事実を元にしているので、説得力がある。この本を読んで、初めて知った情報が数多い。トランプは騒々しいだけで中身がないのに対して、習近平は地味に見えるが、口に出せない秘密を、飲み込んでいるように思う。

著者は朝日新聞の記者で、「現場力」を武器にしながら地道な取材を続けてきたようです。
あとがきにありますが、新人時代は毒物カレー事件の担当で、水を撒かれて大勢の記者が追い払われている最中にたった一人だけ容疑者宅に上がりこんで取材をしていたというエピソードには驚かされました。
本書は特派員として中国に派遣された著者が、激しい権力闘争を繰り広げる奥の院に肉薄して取材をまとめたドキュメンタリーです。

冒頭では米国での取材の様子が描かれています。
中国高官の愛人たちが暮らす村を探し当て、ハーバード大に留学している習近平氏の娘の足跡を追うなど、キャッチーな話題で読者を引き込みます。
そして渦中の人物、現皇帝である習近平氏がどのような背景で生まれたのかをドキュメントで追っていきます。
二代前の総書記だった江沢民氏は中国を経済発展に導きますが、一方で深刻な格差と腐敗を招き、引退後も強い権力を保持したまま院政を敷きました。
後を引き継いだ胡錦涛氏は絶妙なバランス感覚で新中国を築こうとしましたが、江氏の影響力に苦しみ、自身が描いた国家像を実現できずにいました。
そこでついに江氏との対決を決意しますが、激しい攻防で双方が傷を負って政治の舞台を下りることになり、結果的に漁夫の利を得たのが習近平氏です。
習氏は文革時代に下放され、辺境の地で洞穴に住み暮らすなどドン底を見てきた人物で、入党後も地方を転々としていて出世レースからは常に離れた場所にいました。
しかし二匹の猛虎が共倒れとなり、権力の空白期を突いて総書記になってからは強権と戦略を駆使してライバルを次々に追い落とし、権力を一気に掌握していきました。
著者は何度も「権力闘争こそが中国共産党の原動力」と書いています。
確かにこの過酷な闘争を勝ち抜き、生と死の狭間で磨き上げられた勝者は、運と胆力と実力を兼ね揃えていていることを伺わせました。

それにしても面白い本でした。

なにかと話題の朝日新聞だが(悪い意味で)、こんな記者がまだ残っているんだ、と正直思った。
中国当局の監視の目をかいくぐって、徹底して現場取材にこだわる姿勢は、「記者魂」そのもの。朝日的な権威など、お構いなしだ。

中国への知識などほとんどなかったが、最後までハラハラわくわくして、読むことができた。
なぜ習近平は幹部をつぎつぎと切り捨てるのか――その疑問を、日頃の新聞紙面で抱いていた。裏側にはこんなドロドロとした物語が隠されていたのか、と読後は、自分の中の中国観が一変した。

中国はおぞましい、でも、だからこそ、峯村さんのような記者には、たまらない取材の題材なのだろう。
文句なしの五つ星。

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