未来をつくる権利―社会問題を読み解く6つの講義 (NHKブックス No.1216) の感想

　「シノドス」編集長であり、評論家・編集者として活躍する荻上チキ氏による、「権利は、つくるもの、つくることができるもの」との絵解きと、そのことを通して、これからの社会を考え、現在を考える一冊です。
　1981年生まれの荻上チキ氏が見てみたい未来を、若年の読者層を対象にしたと思われる平明さで、ある種「無理がない」と思わせる論理運びで軽快に語っている。イデオロギー過剰でもなく、信仰告白でもなく、「こんな未来も面白くないか」との呼びかける語り口が、現在の世相に適合しいるのだろう。
　荻上氏が構想する「未来をつくる権利」の一部は、「縁を切る権利、病気である権利、快眠権と快便権、「家族」をつくる権利、スポーツ権」。これらは、未来が持つであろう技術の水準の上に、個の生きやすさを置きながら、現在の「穴」を埋めながら、社会の安全を保つにはという問題意識があるようだ。
　煽りの無い文章が心地よい。0