伝説のFRB議長 ボルカー の感想

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タイトル伝説のFRB議長 ボルカー
発売日販売日未定
製作者ウィリアム・シルバー
販売元ダイヤモンド社
JANコード9784478023471
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

 FRB議長として米国の高インフレを抑え込んだ功績で名高いボルカー氏の伝記。社会に役立つことを望み、大統領との軋轢を恐れず、政治的圧力に屈しない強い信念の持ち主であることが分かりました。1962年に民間銀行から財務省に引き抜かれ、通貨担当事務次官、NY連銀総裁、FRB議長、と重要な役職に1987年まで就いた事から、金融史の次の出来事について、当時の米国経済や国際情勢、氏の決断の背景と周囲の反応を知る事ができ有益でした。1)貿易赤字によるドルの弱体化につけ込んだ投機筋による対ドル金価格の暴騰、2)金・ドル兌換と固定相場制の廃止、3)政策金利操作からマネーサプライ制御への一時的政策変更、4)インフレ抑制を優先するために景気後退期でも政策金利を上げた事。また、FRB議長辞任の情報が流れると、ドル安と金価格上昇が起こり市場が落胆を示した事は信頼と氏の功績を表しています。

  サブプライム危機によって政府機関に再登場し、銀行の自己勘定取引禁止などの規制を盛り込んだボルカー・ルールを提案します。考案の過程で、金融機関に対するどのような考えや経験則が影響したのかが分かり興味深かったです。また、現在の日本の金融政策にも関連する、憂鬱になる次の言葉を一般論として述べています。「わざとインフレを起こすことで実体経済の問題を解決しようとしても、少々のインフレでは役に立たない」、「中央銀行がひとたび政策手段としてインフレを引き起こせば、それを退治することは非常に困難になる」

「何が危険かと言えば、切羽詰まったあげくにわざとインフレを起こすことで実体経済の問題を解決しようとしても、少々のインフレでは役に立たないとすぐにわかることだ。(中略)ひとたび政策手段としてインフレを引き起こせば、それを退治するのは非常に困難となる」ーーーこれは、ボルカーが2011年9月に新聞の論説面に投稿したもので、本書の最終章で紹介され、書評でも取り上げられていたくだりである。
本書を読むと、ボルカーがたぐいまれな洞察力とゆるぎない判断力で、権力に抵抗し、インフレと戦い、アメリカだけでなく世界を金融危機から守ってくれたことがよくわかる。

インフレを起こして景気をよくするためにと、異次元といわれるまでの金融緩和を断行している日本。将来に備えてせっせと預金する多くの庶民にとって、インフレは恐ろしく、不安をかき立てる。
訳者は、あとがきで(2011年に書かれた原作にもかかわらず)「本書を訳しながら、著者のウイリアム・シルバーは、現在の日本への警鐘としてこの本を書いたのではないのだろうか、と何度も感じた」と感想を述べている。
本書では、ケネディからオバマまで5人の大統領から信頼を得て、手のつけられなくなったインフレと戦いアメリカと世界に安定をもたらしたボルカーの苦闘とその間の裏話のような史実がわかるだけでなく、今の日本の金融政策に思いをはせざるを得ない教訓が読み取れる。

FRB議長を退いた後、リーマンショック後の金融危機でボルカーは再び表舞台に出ることになった。本書には、オバマ大統領が命名したボルカー・ルールが成立するまでのいきさつが詳しく書かれている。ボルカーは、銀行が危険な投機に走った挙げ句に破綻しても、巨大すぎてつぶせないという理由で国民の税金を使って救済するのはおかしい_と考え、銀行規制ルールを成立させるために粘り強い働きを見せた。

世界中から厚い信頼を得たボルカー。私生活は質素そのもので、妻のバーバラは家計のためにパートで働き、ボルカー自身は私利を考えることはなく、安い葉巻をくゆらして公僕として働くことに喜びを感じていた。

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