歴史問題は解決しない の感想

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参照データ

タイトル歴史問題は解決しない
発売日販売日未定
製作者倉山 満
販売元PHP研究所
JANコード9784569816876
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » イデオロギー

購入者の感想

 第一次世界大戦の勃発とアメリカの擡頭(たいとう)によりそれまでのウェストファリア体制が崩壊したという事実と、その事実を日本人が今なお理解できずにいるという事実を説き明かした、全ての日本人の目を醒ます、著者渾身の力作。著者は、日本人の常識的な考えや発想に囚われず、日本人には理解しにくい外国人の考え方や感じ方に潜む本質、または世界史の出来事の本当の意味などを見抜く能力に長けているが、本書は、著者のそのような能力が遺憾なく発揮されたことで生まれた一冊と言える。
 ウェストファリア体制とは、「戦争そのものに善悪はない」という「無差別戦争観」の上に立脚し、「目的限定戦争」を旨とする体制である。そして、第一次世界大戦により、世界は再び「総力戦」(この言葉の真意は本書で繰り返し語られている)の時代へと逆戻りしたのである。
 本書を通読し、つくづく思ったのは、第一に、日本人にとっては当たり前であるウェストファリア体制も、ヨーロッパ人にとっては、宗教戦争の終結よって誕生した一種の偶然の産物でしかなかった、ということであり(だからこそ、それは永続的なものにはならなかったわけである)、第二に、日本が世界史に登場した時期が、たまたまヨーロッパがウェストファリア体制に置かれていた時期と一致していたのは、日本にとって非常に幸運なことであった、ということである。また、これらのことから言えるのは、ウェストファリア体制はあまりにも日本人の気質に向いていたが故に、第一次世界大戦後の世界秩序の転換に日本人は順応できなかった(または気が付くことが出来なかった)、ということである。さらに言うと、日本人にとっては、ウェストファリア体制は、唯一無二の絶対的な世界秩序であるが、日本人以外の全ての人間にとってはそうではない、というところに、日本人が世界に冠たる優れた国民である所以がある、ということになるであろう。ウェストファリア体制を確立したヨーロッパ人自身にとってすら、それはわずか二百五十年で覆った一過性のものでしかなかったわけだし、本書にもある通り、アメリカ人や中国人に至っては、そもそもウェストファリア体制そのものが理解不能なのである。高山正之氏ではないが、まさに「世界は腹黒い」のである。

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