Metro2033 上 の感想

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参照データ

タイトルMetro2033 上
発売日販売日未定
製作者ドミトリー グルホフスキー
販売元小学館
JANコード9784093567114
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ロシア文学

購入者の感想

と言うよりも、先にゲーム版をプレイしておいた方がイメージが沸きやすいと思います。

ロシアの若手小説家、ドミトリー・グルフホスキー氏による長編小説です。いわゆるアポカリス物と言う奴で、核戦争で荒廃してしまったモスクワが舞台。
世界観は素晴らしく、荒廃してミュータントが支配する地上や息苦しい地下の描写はとてもしっかりしています。 個人的に凄い!と感じたのは殴られるところとトンネルの恐怖でした。
本当に絶望と孤独を感じるような世界観で、ほとんど救いがありません。
訳者さんの腕がいいのかも知れませんが、思わず祈ってしまうこと請け合いです。

主人公のアルチョム君、彼には人並みの道徳観や正義感のような物は有ります、しかし間違っても天才的な射撃で物事を解決するわけでも、説教で相手を何故か改心させられるような特殊能力を持っているわけでもありません。

むしろ気弱で読書好き、流され易い上に確たる自信がなく、何度も自分の無力さを痛感させられている描写があります。
アルチョム君は旅の途中に様々な同行者を得るのですがいまいち打ち解けられないまま別れてしまうのです。
しかし、それだけにそこにいそうな気弱な兄ちゃんとして感情移入しやすく、読者は次第に彼と一緒になってこの世界を旅しているような錯覚に陥るはずです。
頑張って願ってえば皆救われてなんでも叶う。そういうハリウッド映画のようなテンプレを打ち砕いてくれます。 ここはやはりロシア文学の特色でしょうか。

陰湿なメトロ、人間の脆くて汚い本性、最終戦争の後ですらイデオロギーを巡って戦う愚かさ、これだけ挙げるとありがちな話に見えますが、そこに肉付けされた世界観が凄まじく痛ましく、そして荒廃しきっています。
嫌気が差すほどリアルな世界観に読者は胃がキリキリと痛くなるでしょう。

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