「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル「聴く」ことの力: 臨床哲学試論 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者鷲田 清一
販売元筑摩書房
JANコード9784480096685
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 東洋思想 » 東洋哲学入門

購入者の感想

鷲田清一さんは数少ない哲学者で、過去の哲学を紹介したり解説するだけの「哲学」学の学者ではありません。
「ちぐはぐな身体―ファッションって何?」「見られることの権利―〈顔〉論 」など普段見過ごして深く考えないモチーフについてユニークな視点で、哲学する本を出しています。
この本は臨床哲学という聞きなれない著者が提唱する哲学についての試論です。

ほどなく死を迎える末期がん患者に、「私は、もう駄目なのではないでしょうか?」と聞かれた時、あなたならどう答えますか。
1.「そんなこと言わないで、もっと頑張りなさいよ」と励ます。
2.「そんなこと心配しなくていいんですよ」と答える。
3.「どうしてそんな気持ちになるの」と聞き返す。
4.「これだけ痛みがあると、そんな気持ちにもなるね」と同情を示す。
5.「もうだめなんだ・・・・・・とそんな気がするんですね」と返す。

医師は1を選び、看護師は3を選びます。
精神科医は5を選びます。

患者は、説明・解説を求めているのではなく、理解と受容を求めているのです。
患者の気持ちに寄り添うことで、苦しみは和らぎます。
説明・解説・激励で・同情では得られないものです。

一般的に男性は説明・解説で相手を納得させようとし、女性は思いやり、同情する傾向があります。
精神科医の、オウム返しの応答は、「傾聴」の内容です。

著者は、このエピソードで、上から目線の医師ではなく、下からの患者の視点に立つ臨床哲学のエピソードとして紹介します。
大上段に振りかざして、世界とはなにか、意識とは、心とは、を取り組むのではなく、身近で現実的な事物から展開する臨床哲学を提唱します。

目線がかち合う、声が届く、沈黙とことば、間が取れない、だれかに遭うこと、声の響く、傷つきやすさ、祈りとしての傾聴、人の脈に触れる、ホスピタリティ等々が、論考されています。
いずれも興味を引くモチーフですが、結論めいたことを唱えることなく、様々な事例や本を引用して、関連付けをしています。

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